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2016/11/29
前回の日記「クイズ: どんな意味がある漢字なのでしょう?」で、持っている書に書いてある文字の読み方をお聞きしてみたら、さっそく教えてくださるコメントをいただきました。

見るたびに何だろうかと首をかしげて何年も過ごしていたのですが、やっとすっきりしました♪ どうもありがとうございます!

問題の文字は、これです ↓



立て続けに入ったコメント3つのお答えは同じもの。つまり、書が分かる方がご覧になると、考えこむ必要もなく文字を特定できるようです。

この記事をアップロードするのと同時に、いただいかコメントすべてを公開しまう。唯一、私と同じようにお酒呑みの発想をなさった方もあったので、それも嬉しかったのですが、非公開コメントでした。

有徳
なのだそうです。

これなら額に入れて飾っておく価値がある言葉ですよね。

私には「肴」と「徳」に見えていました。「徳」は合っていました♪ 

「肴」と見えたので、オツマミを前にして徳利でお酌する場面を思い抱いていたのです。この額は、来客があったときに食前酒を飲む部屋にあるのが先入観を植え付けていた...。それと、「徳があったら何の感じが結びつくかという発想がなかった。つまり、私には徳なんかはないので、「有」は思い浮かばなかった。

私が「有」と読めなかったのは、上に大きく書かれている「又」に引っかかってしまったからでした。

「徳」の方は、目のように見える部分と、「心」の部分に特徴がありますね。

書体が何であるかまで教えてくださったコメントがあったので、Wikipediaに入っている文字を取りだすことができます。


目-bronze.svg

心-bronze.svg

 
「有徳」の意味は[何となく意味がとれたのですが、確認してみました。
「うとく」ないし「ゆうとく」と読むそうです。
  1. 徳行のすぐれていること。また、そのさま。
  2. 富み栄えること。また、そのさま。富裕。

ただし、「有徳人(うとくにん)」という裕福な人を意味する言葉は、鎌倉時代から江戸時代まで用いられた言葉だそうなので、この書の意味としては1番目の徳がそなわっていること、の方だろうと思いました。

ちなみに、この額を何年も飾っていますが、このうちの片方でも私が持つようになった、というご利益は、全く現れてはいません。意味が分かった今後も、徳を身につけようなんて務めることはないでしょう。何となく、「徳」という言葉は好きではないのです。


古代中国の文字

この文字は、甲骨文字に次いで古い「金文(きんぶん)」という書体なのだそうです。今から3,50 年前に亀の甲羅や動物の骨に刻まれた甲骨文字が登場し、その後に青銅器に記された文字が「金文」という書体ということのようです。

Wikipediaの「金文」に文字のサンプル画像が入っているので眺めてみたのですが、文字から元にされたものが連想できるものが多いし、どこかユーモラスな書体なので非常に面白い♪


「有徳」と書いてあること、さらに書体は「金文」だと分かると、インターネットで検索できました。私の額に入ったものとそっくりの書の画像もある。

全く同じ書き方で、同じ2文字を縦に書いてあるものは、こちらです


こちらの書には「有」と「徳」の文字が入っていて、同じ書体に見えます:
篆書孔子論語句:「徳不孤、必有隣」

「徳不孤 必有隣」は論語に入っているフレーズで、本当に徳があれば人が集まってくる、という意味なのだそうです:
☆ 禅語に親しむ: 徳不孤 必有隣(論語)  徳は孤ならず 必ず隣有り

有隣堂書店は知っていたのですが、この言葉から作っていたのですね。商売繁盛にも繋がるし、良い命名でしたね。

ところで、「徳不孤 必有隣」と筆で書かれたものを入れていたサイトでは、これが篆書体(てんしょたい)だと説明されていました。篆書体は「金文」から発生しているそうなので、似ていても当然なのでしょうね。


金文と篆書体を比べてみる

似たように見えた金文と篆書体の「有」と「徳」の文字。私が持っている文字はどっちなのだろう? Wikipediaの書体のサンプルが入っているので、この2つの文字を比べてみました。

では、あらためてお宝を拝見しましょう。テレビ番組「なんでも鑑定団」では、こんな台詞を言っているのではなかったでしたっけ?



金文(きんぶん)
Chinese bronze inscriptions
篆書体(てんしょたい)
Seal script
有-bronze.svg有-seal.svg
月-seal.svg
德-bronze.svg画像検索で見つかった文字
目-bronze.svgCharacter Eye Seal.svg
心-bronze.svg心-seal.svg

Inscription on the Song ding, c. 800 BC

Small seal script epigraph on the standard weight prototype of Qin dynasty.
金文(きんぶん):

青銅器の表面に鋳込まれた、あるいは刻まれた文字のこと。この場合の「金」は青銅の意味。

中国の殷・周のものが有名。年代的には甲骨文字の後にあたる。

※ 現代日本には、和文フォントとして用いられる「金文体」がある。
篆書体(てんしょたい):

篆書、篆文ともいう。

広義には秦代より前に使用されていた書体全てを指すが、一般的には周末の金文を起源として、戦国時代に発達して整理され、公式書体とされた小篆とそれに関係する書体を指す。

公式書体としての歴史は極めて短かったが、現在でも印章などに用いられることが多く、「古代文字」に分類される書体の中では最も息が長い。



「月」に「又」が乗っている「有」

コメントでいただいた説明は、こうでした:

有は 又 と 肉月 の組み合わせ
又は 右手の形で 祭肉を手にとって
神に供えるの 意味


何となくわかったような、分からないような...。それで情報を検索してみました。

絵が入っているので、こちらの説明が分かりやすかったです。


「有」という漢字の意味・成り立ち・読み方・画数・部首
 ⇒ 「肉」という漢字の意味・成り立ち・読み方・画数・部首
 ⇒ 「又」という漢字の意味・成り立ち・読み方・画数・部首


まず、「又」は「ゆう」と読むのでした。

」右手の形だと言われれば、そうも見えますね。指が5本ではなくて3本なのが気になりますけれど。


その下にある「」は、お月さまではなくて、切り身の肉のイメージ。

漢字で月偏と言われますが、2通りあるわけですか。肝、肥、胸、肌などの月偏は、肉の意味を持っている「肉月」の方の意味で使われている・

☆ 象形字典: 肉族
☆ コトバンク: 肉月(ニクヅキ)とは

私は「有」を「肴(さかな)」と見てしまっていたのですが、この漢字の月も肉の方の意味。とすると、私が勘違いしたのも、そうは離れていなかった♪

「肴」という漢字の意味・成り立ち・読み方・画数・部首


右手に肉を持っているのなら「俺には、あるぞ~!」という雰囲気が伝わってきます。でも...。

左手に肉を持ったら「有る」ことにならないの?

明解な説明がありました:
第17回 人の形から生まれた文字〔4〕 体の部分~手と足(1)

右手は祝詞(のりと)を入れる器(さい)を持つ手で、左手は呪具の「工(神に仕える人が持つまじないの道具)」をもつ手とされているのだそう。

キリスト教でも右が良くて、左は良くないという区別がありましたけれど、中国でも同じだったのですね:
ロマネスク教会 (4) : 右は天国、左は地獄 2008/05/03

祝詞を入れる器を「口(さい)」とするのが、漢文学者 白川静の文字学の根底にあるようです。
祝詞を入れる器を表す「さい」は
右のような文字で、
これが「口」とう文字になった。
口-oracle.svg
第5回 口-oracle.svg(さい)(載書(さいしょ))について(1) 

「又(ゆう)」から変化した「ナ」のような文字に、祝詞を入れる容器の「口」を入れれば「右」。まじないの道具の「工(こう)」を入れれば「左」。

それで、「口」や「工」の代わりに「月(肉)」と組ませれば「有」になる。

いただいたコメントで引用されていた白川静の『常用字解』の説明では、「右手の形で祭肉をとって神に供える」のが「有」になる、となっていたそうです。つまり、「俺には食べ物があるぞ~♪」ではないらしい。


「口」を「さい」としていただけでは漢字の解釈で矛盾が生じる、という白川静氏の説に疑問を投げかける見解も出てきました。私自身も、ワトソンのS-R理論のように、何か1つのことで全てが解明されるという学説には懐疑心が先だってしまいます。でも、何かあるのではないかと探すのは楽しいだろうとは思うし、それではおかしいと反論するのも面白いはず。

漢字は奥深くて面白いのですね。子どもの頃、こういう風に漢字を眺めることができるのだと教えてもらえていたら、丸暗記しなければならないものだとしか受け取っていなかった漢字が好きになっていたかもしれないのに...。


「心」という文字が面白い

金文の書体の「徳」の中にある目に見える形は良いのですけれど、「心」の文字は鼻に見えてしまう...。

心臓はこんな形をしているというわけでもないですよね?

改めて心臓の形を眺めてみました。

心臓
Heart anterior exterior view.jpg
金文
心-bronze.svg
篆書体
心-seal.svg

 
似てないと思ったのですが、心臓の形から「心」の文字が出来たという記述がありました:
「心」という漢字


でも、象形文字が出来たのは紀元前何百年前という時代でしょう? そんな時代に解剖するはずがありませんから、人間には心臓があって、どんな形をしていいるかなんて把握していたのだろうか?

... と思ったのですが、狩猟民族なら、食べている動物を見て心臓が生命力の根源だと分かっていたそうです:
第16回 人の形から生まれた文字〔3〕 体の部分~顔を中心に(2)

そうか、牛肉にも「ハツ」という部位があった。ハツは漢字でどう書くのだろうかと思ったのですが、英語のheartsから作られているだけのことなのでした。


「徳」という文字を分解したものの説明もありました:
【文字】「徳」の心。


それにしても、篆書体の「心」には、金文にはなかったヒゲが付いたのは何を意味するのだろう? 心臓には血管がつながっていないと機能しないと分かったから、というわけでもないでしょう?

考えているときりがない。ここまでだけでも多くのことを学んだので、私の額縁に入っている文字は「有徳」だと分かったところで止めておきます。

でも、時間があるときに読んで勉強したいと思ったサイトと出会ったので、外部リンクに並べておきます。


 白川 静 『字通』  字通 [普及版]

ブログ内リンク
★ 目次: クイズを出した記事一覧
★ 目次: 右と左の違いが気になる
フランス人が顔を見たときに注目する部分 【シリーズ記事目次】 2005/03/02

)外部リンク:
OK辞典・漢和辞典 (漢字の意味-成り立ち-読み方-画数-部首を検索)
親子で学ぼう!漢字の成り立ち
禅語に親しむ
古啓念慮 ~文字・書のはなし~: 文字のはなし
Wikipedia: 中国の筆跡一覧
青銅器をはじめとする中国美術を解説~殷王朝から周王朝まで



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コメント
この記事へのコメント
あらあら、こちらのブログを知らずに、一つ前のにコメントしましたが、微に入り細に入り・・ありがとうございます。
有徳で思い出しましたが、桃李もの言わざれども下自から蹊を成す・・今世でも、ご縁は(笑)なかったようです。

徳の心、確かに鼻のようですね。(笑) 最初、橘のような柑橘系か、かぼちゃかと思いましたよ。(汗) なワケないですけれど。最近は、書で絵画に見せた作品を多く見かけますね。白川静氏の分厚い本、生協の配達で購入しましたが行方知らず。引越しの時もなく、残念です。

で、Otiumさん、今回のは金文、篆書体? (笑)
2016/11/30 | URL | フォルナリーナ  [ 編集 ]
肴 ♪
白川静さんの 「字統」をみたら
肉月の上の部分( × と × )を コウ と読み
意味は 骨とのこと。。。

よって 肴は 骨付き肉 だってさ ♪

サイ 、、、
口は  クチだけではない という 白川静さんの
説に接して 彼の書籍を読み始めた ぼくですが
サイ について こんな説がありました
『入門講座 白川静の世界』

告:内祭 、災厄や敵襲の際に神に祈る
史:内祭、、告る ほどでは ない 月次祭
(使)人:外祭、 王朝の祭祀を氏族の霊廟で行う
載王事:外祭、 殷王朝の祭祀を諸外国に強要する

>何かあるのではないかと探すのは楽しいだろうとは思うし、それではおかしいと反論するのも面白いはず。

Otiumさんの おっしゃるとおりです
それが 科学の楽しみなのだ ♪

>漢字は奥深くて面白いのですね。子どもの頃、こういう風に漢字を眺めることができるのだと教えてもらえていたら、丸暗記しなければならないものだとしか受け取っていなかった漢字が好きになっていたかもしれないのに...。

子供の ナゼ?? に
大人が 答えてあげればいいんだけど、、
答えてくれる 大人がいないと
アホな 「教師」なんか あてにしないで
子供が自分で 考えるしか ないですね。。。

2016/11/30 | URL | たかゆき  [ 編集 ]
Re:
v-22 フォルナリーナさんへ

>徳の心、確かに鼻のようですね。(笑) 最初、橘のような柑橘系か、かぼちゃかと思いましたよ。(汗)

タチバナの名は知っているものの、どんな植物なのかと思って検索したら、橘紋が出てきました。ほんとう~、金文の「心」をひっくり返したようなデザインが入っているので驚きました。

http://kamondb.com/plant/tachibana.html

>で、Otiumさん、今回のは金文、篆書体?

どちらなのか分からないので逃げておりました。「徳不孤 必有隣」の書をサイトに出しているプロの書道家が篆書体とおしゃっているのだから、そうなのだろうと思うべきなのですが、私には金文に見えてしまいました。
2016/11/30 | URL | Otium  [ 編集 ]
Re: 肴 ♪
v-22 たかゆきさんへ

>肴は 骨付き肉 だってさ ♪

わぁ~♪ 骨にへばりついている部分が好きなのです。鶏肉などの丸焼きを食べるときに「どの部分が欲しい?」と言われると、骨付き部分を選んでいます。ますます「肴」が好きになった!

>サイ について こんな説がありました

白川静の説には非常に惹かれたのですが、まず、その時代の人たちにとって、祭事が全てだったのかを勉強しないと理解できないと思ったのでした。漢字が出来た中国のことも理解しないといけないので、ハードルが高すぎるのもある。でも、漢字を使う人は上層部だったはずですから、それで決めていたというのも十分ありうる...。

>アホな 「教師」なんか あてにしないで 子供が自分で 考えるしか ないですね。。。

優秀な子は、それをやるのでしょうけどね。でも、優れた人たちが集まる家庭にいたとか、優れた教師がいたとか言う人の話しを聞くと、あなたは恵まれていたから階段を登れたのだよ、とひがみたくなる...。
2016/11/30 | URL | Otium  [ 編集 ]
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