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2017/03/10
フランスには、ニンジン色というのがあります。

日本では人参色などとは言わないのだろうと思ったのですが、存在するのでした。フランスの色と似ていますが、微妙に違いますね...。

日本の伝統色 フランス
人参色
#ec6800
carotte
F4661B
F5671B

カロチン(カロテン)というのは、人参の橙色から来た言葉なのだそう。日本語として聞くと2つの関連は連想できないのですが、フランス語や英語だと、なるほどと思います。ニンジンはフランス語ではcarotte、カロテンはcarotèneなので、始めの部分は同じなのでした。



ニンジン色の髪の毛

フランスの作家ジュール・ルナールの小説『にんじん(1894年)』の原題は『Poil de carotte』でした。

Poil de carotte(人参の毛)というあだ名で呼ばれていた男の子のお話しです。しばらく前に「亜麻色の髪とは、淡い栗色ではなかった」を書きながら、改めてニンジンに例えられる髪の毛はどんな色なのか気になりました。

Wikipediaに入っていた画像は、これでした ↓

 
Reflets de cheveux roux

オレンジ色がかっていますが、この色をニンジンに例えますか...。

こういう赤褐色というか、赤茶色の髪の毛は、フランスではrouxあるいはrousseurと言われます。特に光を放っている場合にニンジンに例えられたようです。

rouxと言えば、小麦粉をバターで炒めて作る「ルー」がありますが、綴りは同じ。こういう色にするからなのでしょうね。

フランスには「renard roux」と呼ばれる狐もいます。日本ではアカギツネですね。



さきほど入れた髪の毛とよく似た色...。


髪の毛の色は幾つに分類する?

肌の色は大きく分けたら幾つになるかを「肌色って、どんな色?」で書いたので、髪の毛の分類方法も探してみました。Wikipediaにあった項目を並べてみます。

日本語 フランス語 英語 中国語
黒髪 noir black hair 黑髮色
栗毛 brun
châtain
brown hair 褐髮色(ブルーネット)
栗髮色
auburn auburn hair 赤褐髮色
赤毛 roux red hair 紅髮色
金髪 blond blond hair 金髮色
銀髪・白髪 blanc(白) gray & white hair 灰白髮色


フランスでrouxと呼ばれる赤毛の髪を持つ人は、フランス人の5%に過ぎないのだそう。世界的にも稀な色で、1~2%しかいないと書いてありました。それなのに、ちゃんと赤毛は大きな分類に入っているのですね。


ニンジンといっても、色々な色がある

人参と言えば鮮やかな橙色を思い浮かべるけれど、原産地のアフガニスタンには、赤や紫、黒や白など、様々な色の人参がある、と書いてありました。

色素の割合で色が変わってくるそうで、βカロテンが多ければ橙色、トマトに多いリコピンが多いなら赤、トウモロコシを黄色くするキサントフィルが多いと黄色、ブルーベリーや赤ジソに含まれるアントシアニンがあると紫色になるのだそうです。

フランスでも、最近は変わった野菜に人気があるので、人参にバリエーションがあるのは見ていました。



マルシェに出店していてパリっ子たちに人気がある直売農家だったのですが、彼は引退すると書いた記事が1年前にありました。農場はどうなったのかな?...


ニンジンは、大昔には葉を食べていた

どの色がニンジンの元祖なのかと思って、少し調べてみました。

原産地はアフガニスタンとみられる。そこから中国に渡ったのが東洋種、ヨーロッパに渡ったのが西洋種。

ヨーロッパでは、原始時代の遺跡からもニンジンの種が発見されていました。でも、大昔にはパースニップと区別されていなかったらしい。

そういえば、ニンジンに似た野菜がありましたね。人参と同じくセリ科の植物でした。

PastinakePflanzegeerntet.jpg  

ヨーロッパで食べられていたニンジンは、中世までは根の部分が細くて、スジも多いので、食べても余り美味しくなかったようです。人参は、むしろ葉を香草として使っていた、という記述がありました。

京野菜に人参の葉があるので、家庭菜園なら若いニンジンを臭覚できるので、その葉で天ぷらを作ってフランス人に出すと、ニンジンの葉を食べるのかと驚かれます。でも、美味しいと言われているのです。今はニンジンの葉を食べなくなった、というだけではありませんか?

パリで生まれ育った友達が、子どものときに夏休みを過ごしていた田舎の家での話しに、こんなエピソードがありました。

パセリを取ってくるようにと言われて、張り切って野菜畑に行った彼女。

持っていった野菜を見た大人たちは、これはニンジンの葉と言って大笑いしたのだそう。

高齢になっても覚えているくらいなので、彼女はかなり傷ついたらしい。

でも、摘んだばかりのニンジンの葉だったら、パセリの代用になるような気がするけれどな...。


さて、ヨーロッパでニンジンがどう進化したのか? フランスの情報を読んでみました。


◆ オレンジの色をしたニンジンが登場したのは16世紀のオランダ

15世紀になって、フランス、ドイツ、オランダではニンジンの栽培を始めた。

薄紫色のニンジンは、ヨーロッパの土壌では風味が失われるために、次第に栽培されなくなり、その代わりに黄色い品種は成長が良いので人気がでた。

白っぽかったり、黄色、赤、緑色、紫色、黒などの品種が登場したが、だいだい色のはない。オレンジ色のニンジンは、人間が意図的に作り出した。

16世紀、果肉が多くてオレンジ色のニンジンが品種改良から生まれ、Longue Orange種と呼ばれた。これが他の品種に取って代わり、色々な品種を生み出していった。

16世紀の絵画では、現代に見る色のニンジンが登場していました。

フランドルの画家ヨアヒム・ブーケラール(Joachim Beuckelaer 1534年頃~1574年頃)の作品です。彼は、当時の食べ物をたくさん描いているのですが、ニンジンらしきものが何枚もの絵に見えます。

ロンドンのナショナル・ギャラリーのサイトに入っている、こちらの1569年の作品では、画像を拡大してみると、左下にはっきりと橙色の人参が見えます。フランスの美術館にある作品では、こちらの絵画でも同じ位置にニンジンが描かれています。


オランダのシンボルカラー

16世紀のオランダで、オレンジ色のニンジンが登場した理由が説明されていました:

フランスのプロテスタント公国であるオランダ王家(オラニエ=ナッサウ家)に忠誠であることを示すために、ニンジンの赤と白の品種を交配して鮮やかなオレンジ色を作り上げた。


この時代には、ウィレム1世 (オラニエ公)がネーデルラント連邦共和国としてオランダ独立国家を築いています。

オラニエ」というオランダ語は、オレンジの意味がある。

つまり、オラニエ公のために、オレンジ色をしたニンジンを作ったということ?!


プリンスの旗
現在の国旗



オラニエ公という名前には、フランスが関係していたのでした。

オランダとフランスの関係で私が知っているのは、中世に栄華を極めたブルゴーニュ公国がオランダにまで領土を広げていたこと。でも、他にもあったのですね。

南フランスに、古代ローマ時代の遺跡が残るオランジュ(Orange)という世界遺産にも登録されている町があります。音楽祭が開かれるので何度も行っていながら、オランダと関係していたとは知りませんでした。

オレンジは、フランス語ではオランジュ。オランダ語でオラニエ。

オランジュ公国(Principauté d'Orange)があって、それを相続したナッサウ家の出のウィリアム1世はオラニエ公と呼ばれるようになったのでした。

オランジュ市の紋章は、オランジュ公国の紋章と同じ。



上の部分がオランジュ公国プリンスの紋章で、下の部分はオレンジの木。

でも、オレンジの果実はオレンジ色ではなくて、黄色か金色ではないですか? 丸いのでレモンではないのだろうとは分かりますが、グレープフルーツに見えてしまう...。
Blason Lamorlaye
オレンジ色は紋章で使わないような気がする。でも、使われることは少ないものの、紋章学ではorangéと呼ばれる色として存在していました。

右にいれたのは、フランス中部にあるLamorlayeという町の紋章です。なぜオレンジ色なのかは調べませんでした。


果実のオレンジは、どんな色だったか混乱してきました。


オレンジは黄色がかっていて、ニンジンは赤っぽいですよね。オラニエ公に因んだ色にするなら、もっと黄色っぽいニンジンにすれば良かったのに...。

でも、当時のニンジンは、黄色っぽい橙色だったり、今の普通のニンジンの色だったりしたのかもしれない。
17世紀の絵画です ↓

Gerard Dou - Woman Peeling Carrot - WGA06634.jpg
Maid at the Window (1660), Gerrit Dou

オランダの画家ヘラルト・ドウの作品ですが、ルーブル美術館に所蔵されているこちらにもニンジンが描かれています。


日本では、こういう細長いニンジンは無くて、寸つまりのが多いような気がします。でも、フランスで葉のついた人参を束にして売っているときは、こういう風に細くて長いニンジンが多いような気がする。

13-08-31-wien-redaktionstreffen-EuT-by-Bi-frie-037.jpg


ともかく、オランダのシンボルカラーはオレンジ色なのですね。



オランダのサッカー・チームです。選手たちのユニホームはニンジン色に見える...。


オレンジ色と言っても色々あるわけですね...。
キャロット・オレンジ
#ED6d35
オレンジ
#EE7800
マンダリンオレンジ
#F3981d
人参色
#EC6800
オレンジ
#FFA500
carotte
F4661B


人参を品種改良してオランダ王家の色にしたというのは、単なる言い伝えというか、こじつけのような気がしてしまいます。でも、美味しい人参を作るために品種改良が進んだのはルネサンス期で、オレンジ色の美味しいニンジンを登場させたのはオランダ、というのは間違いなさそうなのでした。


ニンジンのサラダ

carotte(キャロット)という色のフランス語での説明では、ニンジンの皮をむいたときの色とか、千切りにしたとき(これも皮をむいてからのこと)の色と表現されていました。人参は、皮を剥かない状態でも橙色だと思うのですけど...。

 Carottes râpées

でも、フランスでニンジンの代表的な料理は、carottes râpéesと呼ぶ千切りサラダかもしれない。

フランス料理ではサラダが欲しいですが、レタスなどと違って、ニンジンは必ずストックがある。それで、いつでもニンジン千切りサラダは作れるので便利なわけなのでしょう。

ピクニックをするときの食べ物を探しに肉屋さんに入ると、惣菜コーナーに人参サラダだけはあることが多いです。ありふれた惣菜なので、買う気にはならないのですけど。

母親はこんな風に作っていたと言って、人参サラダの作り方を見せている動画がありました。ボールで作って、そのまま食卓に出されていたけれど、このシェフは最後の飾りつけに工夫を加えたのだそう。


carottes râpées

マスタードをかなり入れていますが、シンプルな作り方ですね。この人参サラダのレシピでは、オレンジの絞り汁を加えると美味しくなるのだと言う人がいたのを思い出しました。あぁ、ニンジンとオレンジでしたか!

ブログ内のリンク:
『にんじん』の作者ルナールの家。そして、赤毛とは? 2008/02/08
亜麻色の髪とは、淡い栗色ではなかった 2017/01/08
肌色って、どんな色? 2017/03/03
★ 目次: 色について書いた記事
★ 目次: レシピ、調理法、テーブルウエアについて書いた記事
★ 目次: 食材と料理に関して書いた日記のピックアップ

外部リンク:
Petite histoire de la carotte
Pourquoi les carottes ne seraient pas oranges sans l’homme
De l'Histoire de la carotte
☆ 人参の種類: Carottes
☆ Wikipedia: オランダの国旗
オランダ人にとって特別なオレンジ色
なぜオレンジがメインカラー? 対戦前に知っておきたいオランダ代表とお国事情
オランダ国旗を徹底分析!国旗が持つ6つの秘密とは?
オレンジ色が消えたオランダ国旗
にんじんは何故オレンジ色か
我が国ニンジンの歴史
☆ Wikipedia: オレンジ色
☆ Valenciennes.fr: La Pourvoyeuse de légumes


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コメント
この記事へのコメント
「赤毛アン〕は 有名ですね、、
イメージでは 赤茶色、、と思っています〜

テレビでなにかの 祝日に
オランダの町が  オレンジ色一色になっていました、、それで オランダの国の色は
オレンジ 橙色としりましたが、、
人参色なのかな、、

こちらでも  京人参の赤にちかいのとか
ニュージーランドからの うすいだいだい色とか
むらさきくろいのとか いろんな人参がでてきましたよ、、
2017/03/12 | URL | katananke 05  [ 編集 ]
Re:
v-22 katananke 05さんへ

『赤毛のアン』の原題は『Anne of Green Gables』で、フランス語の訳も同様に屋根を引き合いに出しているのですが、日本では赤毛にしてしまったのは面白い。「緑の切妻屋根のアン」などというのはタイトルにできなかったのだろうな...。

赤毛は、フランス語では「ルー」と特殊を出していますが、英語ではred hairらしい。今では、本当に赤く髪を染める人がいますが、英語圏ではどう区別するのかな?...

日本でも変わったニンジンを売っていますか。私は見た記憶がないので、こんど気をつけてみようと思います。それと、色によって味が変わるのかも確かめてみたい。
2017/03/12 | URL | Otium  [ 編集 ]
人参の味
くろいのは かったことないけど
薄オレンジの ニュージーランドのは
とても甘くて うすく ピールして
生のままサラダで 食べられます、、
日本の色濃いのより おいしいです〜
2017/03/14 | URL | katananke 05  [ 編集 ]
Re:
v-22 katananke 05さんへ

>おいしいです〜

そうすると、カロテンが多いと(つまり橙色)ニンジンはおいしくなるから、オレンジ色の品種に落ち着いたということにはならないですね。意図的にあの色を普及させたのかな...。

2017/03/15 | URL | Otium  [ 編集 ]
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