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2017/02/10
伝統的なバターを作る道具を、フランスではbaratteバラット)と呼びます。バターを作るバラットだと分からせるときにはbaratte à beurre。

シリーズ記事 【バターの見分け方 】 その6

バラットには色々な形があったのですが、代表的なのは次の2つのタイプ。
Baratte verticale à batte
Baratte normande

Baratte normande
Baratte à manivelle

左は、筒に入れて棒で叩くタイプ。右は、樽のようなものに入れてハンドルを手で回すタイプ。樽の中にプロペラのような物があってクリームを攪拌するタイプが登場したのは19世紀だったそうです。だいぶ楽になったでしょうが、それでも人力でするので大変だったようです。

baratteという単語が文献に現れたのは1549年。中世には、身分の高い人たちは豚のラードを使っていて、バターを作って食べるのは農民だったそうですが、16世紀からバターが貧しい人が食べるものというイメージが消え、次第にグルメ化していったそうです。

動詞のbaratterから来ているのですが、この動詞が何から来ているかには諸説あるのだそう。最も有力な説は、古いフランス語のbarate(混乱、動揺)で、イタリア語やスペイン語でも喧嘩や闘争の意味がある言葉なのだとか。クリームを暴れさせて水分を分離してバターを作るわけなので、ガタガタやる、という感じかな...。

バラットでバターを作る方法を、日本ではチャーン製法と呼ぶそうです。バラットは英語でchurn(チャーン)で、英語の方にも激しくかき混ぜるの意味がありました。

クリームをバター粒とバターミルクに分離する工程を、フランスではbarattage(バラタージュ)と呼ぶのですが、日本ではチャーニング(churning)。

でも、フランス語のバラットで通してしまいます。チャーンという言葉に私は全く馴染みがないので。


木製のバラット

ひと昔前の農家では、こんな風にバターを作っていたのかなと思わせる映像がありました。住民たちの生活を記録しているらしく、場所はブルターニュ地方のギマエック


Guimaëc, "le beurre", Bretagne, Finistère

クリームをかなり無駄にしてしまいそうな作り方ですが、ちゃんとバターができていました。


木製のバラットを使っていることを誇りにしているエシレのバターづくりを見せる動画も入れます。エシレは、AOC/AOPとして認められているポワトゥー・シャラント地方のバター。

エシレ社では、1回の作業で900キロのバターができるという大きなバラットを使っていました。


Echiré : un beurre baratté à l'ancienne


メタルのバラット

木製のバラットで美味しいバターが出来ると言われます。でも、今日のフランスではステンレス製などのバラットを使うようになっていて、未だに木製のバラットを使っているメーカーは幾つも存在しないそうです。

バターの製造を見せる動画を探していると、ブルターニュ地方を始めとして北西部のものが圧倒的に多かったのですが、珍しくブルゴーニュ地方と一緒に地域圏を作るようになったフランシュ・コンテ地方のものがあったので入れておきます。

大量生産はしていない製造者では、こんな感じのバラットを使っているのではないでしょうか? 学校の教材になるような分かりやすい説明。字幕まで入れてくださっている♪


La Fabrication du Beurre (Fromagerie de Desnes)

電動化したとはいえ、バターの様子を見ながら作るので技術が必要だし、効率は悪いのですよね。それで、今日のフランスではオートメーション化した機械を使うメーカーが多いそうです。


最先端のバター製造機は、バター大砲

バターを大量生産する会社で使っている最新式のシステムは、連続式バター製造機butyrateur)と呼ばれます。

全ての作業を1つの機械の中で連続的にするので、バラットのように休む時間がなく製造され、数分でバターが出きあがってしまうようです。製造過程でクリームを熟成させることなく作業させるわけですが、フランスで生産されているバターの9割はこの方式らしい。

バラットが「baratte à beurre」と呼ばれるので、こちらの連続式機械は「canon à beurre」というあだ名が付けられています。バター作りの大砲とでもいう命名。

下は少し原始的な装置のようですが、大砲と呼ばれる理由が分かりますね。左の方からクリームを入れて、水分を除きながら作業をしていって、最後に右側の銃口のような部分からバターが吐き出されてきます。


 クリックで拡大



こういう機械を使ってバターを作っている動画もあったのですが、うるさいし、バターが出てくるところは何かを想像させてしまって食欲を失わせるので止めました。

森永乳業のサイトに、連続式バター製造機の仕組みを図で示したページが入っています。


先日から度々登場させているドキュメンタリー「Le beurre et l'argent du beurre」では、大量生産するバターのメーカーとして取材したペイザン・ブルトン社の大砲が映し出されていました。




取材していた人は、凄まじい音がすると言っていましたね。右側の三角形っぽいのがバターを攪拌する装置。


バラットで作ったバターに価値がある

木製にせよ、ステンレス製にせよ、バラットで作ったバターは伝統的な製法で作っているからおいしそうだというアピールになります。そういうバターには「Beurre de baratte(バラットのバター)」と書いてあることが多いです。

伝統的なバター製造用攪拌装置のバラットを使い、生クリームの熟成をしていることを示すわけです。近代的な製法(防臭・脱臭する、生クリームの冷凍ないし急速冷凍する、最終工程のワーキングで乳酸菌を投入するなど)をしている場合には、この表示はできないとのこと。

中には、かなりバラット・バターであることを強調したものもあります。


使っているバターがバラット製なのだ、というのまでありますね。左はサーモンのリエットで、右はブルターニュのお菓子ガレット。


日本では近代的なのが好まれるので、樽型のバラットでバターを作っている会社は存在しないのではないかと思ったのに、検索してみたら出てきました。

でも、日本人は伝統的なチャーン製造かなどというのは気にしないはずなので、パッケージには書いていないように見えます。「プレミアムバター」と呼んでいますね。

このショップでは、昔ながらの「回転式バターチャーン」でゆっくり時間をかけて製造、と説明に書いているのですけれど、全く無視しているショップもありました。

メーカーのサイトで確認すると、メタルのバラットで、ローラーが木製なのですね。木製を使うことにしたのは「どこかぬくもりのあるバターにしたい」と思ったからという謙虚なお言葉。ローラーだけだと、樽型の装置全体が木製であるほどの効果は出ないのかな...。


バラットに焦点を当てたドキュメンタリー

とても興味深いテレビ番組がありました。TV5のÉpicerie fineシリーズに入っていたのですが、そのタイトルも「Le beurre de baratte(バラット・バター)」。

この番組の案内役は、パリの3つ星レストラン「ル・グラン・ヴェフール」のシェフであるギー・マルタン(Guy Martin)。昔のバラットも見せながら、彼が使っているお気に入りのベイユヴェールでのバターづくりを詳しく見せてくれます。

ベイユヴェールのバターについては、先日書いた「無殺菌クリームで作ったバターが最高」の中で軽く紹介していました。この会社では、今では農家の手作りバターくらいしか手に入らない無殺菌のクリームを使っているところで希少価値があるのですが、未だに木製のバラットを使っているというという点でも特異なメーカーなのです。



シェフのマルタン氏には、農業を営んでいた祖父の家に行ってバター作りを体験したことが子ども時代の楽しい思い出なのだと熱っぽく語っていました。彼は1957年生まれですね。その年代のフランス人たちは、子どものときに田舎で味わった本物のバターの美味しさが記憶に焼き付いているようです。

風味を壊さない無殺菌クリームを、木製のバラットで作っているベイユヴェールのバターは、彼が子どもの時に味わったバターを彷彿とさせるのでしょうね。

ベイユヴェールのバターについては、こちらのショップが詳しく紹介していました:
ハイ食材室PARIS: バター ベイユヴェール - Beillevaire

「バターじゃないバター、ベイユヴェール!」なんて書いていらっしゃいますね。私が無殺菌クリームで作ったバターを食べた時は、これが本物のバターだとすると、いつも食べているのはバターじゃないのだ、と思ったのですけれど。さらに、フランスのバターに慣れると、日本のバターは物足りないと感じる。でも、逆にすれば「バターじゃない」になりますね...。

ベイユヴェールのパッケージには、「木製バラットで作り、手で成型した無殺菌バター」と書いてあります。

木型に入れてバターを成形するというのも今では希少価値があるのです。
 Moule à Beurre


もう1つのドキュメンタリー「Le beurre et l'argent du beurre」に登場していたペイザン・ブルトン社のバターは、木型で作ったような縁取りになっているのが美味しそうに見えるのですが、製造過程では木型などは全く見えないのでした。バター製造機の中で、あたかも木型で成型したような形に見えるようにバターを固める装置が入っていたのでしょう。

そういうのがあるから、「手で」成型したなどと書いてあるのでしょうね。

カマンベールチーズでも、お玉を使っている製造が本物だというのがあるのですが、それを機械にさせられてしまうので、伝統的に手でやっているところが「手で」と明記しているのが面白くてブログに書いていました:
「本物のカマンベールだぞ~!」とアピールしたパッケージ 2010/07/24


ベイユヴェールは、現代で可能な限り昔風に作っているメーカーだと見えました。30分くらいのドキュメンタリーですが、昔のバラットも見せながら、ベイユヴェール社のバターづくりもよく分かるので動画を入れておきます。


TV5MONDE emission epiceriefine Le beurre de baratte



ベイユヴェールのバターを楽天市場で検索



続く。
シリーズ記事 【バターの見分け方 】 その6


ブログ内リンク:
★ 目次: 乳製品(チーズ、バター、生クリーム) ⇒ フランスのバター

外部リンク:
☆ Wikipédia: Baratte
☆ Encyclopédie gastronomique: Baratte
☆ Cniel: Que veut dire baratte
☆ Objets d'hier: BARATTE
Beurre français  méthode de fabrication(動画入り)


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