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2017/04/07

シリーズ記事 【フランスの食事の歴史】目次へ
その5

中世のフランスでは、食卓でフォークを使わなかったと書きました:
中世の食事 (3) 食べる道具としては、ナイフとパンがあれば十分 2017/04/06


フォークがなくて手づかみで食べていたというのは食卓でのことで、調理場で使うフォークのようなものは古代から存在していました。

現代のフランス家庭では必ずあるだろうと思われるのは、こういう肉を刺すフォーク。


 Fourchette à viande




下はスーサ(現在はイラン)で発見されて、ルーブル美術館の所蔵となっているブロンズのフォークです。8世紀から9世紀のものと見られています。

Forks Susa Louvre MAO421-422-431.jpg
Fourchettes retrouvées à Suse, bronze moulé, VIIIe-IXe siècles, musée du Louvre

ただし、何に使っていたのかははっきりしていません。祭祀用だったのかもしれません。



フォークはイタリアからフランスに伝わった

ビザンツ帝国(東ローマ帝国)では食事の時に使うフォークが存在していて、この国のお姫様がヴェネツィアのドージュと結婚したために、フォークは11世紀にイタリアに伝わりました。

フランスでも、14世紀後半、シャルル5世の財産目録には宝石が付いた金のフォークが何本か入っていたのだそうですが、チーズを焼くとか何か特別な料理に使っていたのかなどと想像されるものの、何に使っていたのかは分かっていないようです。

一般的には、フランスにフォークを持ち込んだのはカトリーヌ・ド・メディシス(1519~1589年)だと言われています。彼女がアンリ・ド・ヴァロワ(後のアンリ2世)と結婚するために、1533年にイタリアからフランスに来たとき、嫁入り道具の中にフォークがあったからです。

もっとも、彼女が特にフォークを使うのが好きだったというわけでもなく、フォークを使ったのは加熱した西洋梨を食べるためだけだったと言われていました。

「火を通したナシ」と書いてあるので、ナシを煮たのか、焼いたのか分かりません。でも、デザートだったのでしょうね。

私が食べたナシのデザートの写真を入れてみます。カシスのソースがあるのですが、確かに、こういうツルンツルンとした梨だったら、手づかみでは食べたくない...。

 



始めに登場したフォークの先は2つだった

16世紀のフランスで使われたという旅行用のセットの写真がありました。


French travelling set of cutlery, 1550–1600, Victoria and Albert Museum

この当時のフォークの歯は、イタリアでもフランスでも2本だったようです。ほとんど突っつく食べ方しかできないように見えますから、フォークを使って食べるのは便利だと歓迎されはしなかったのは理解できますね。


コルレットがフォークを普及させた?

フォークが実用的にフランスで使われるようになったきっかけは、カトリーヌ・ド・メディシスの息子のアンリ3世が1574年にヴェネツィアを旅行したときのことでした。

イタリアでは、フォークが入ったのが早かったせいと、パスタを食べるのには便利だったか、かなりフォークが普及していたようなのです。

そこでアンリ3世は、フォークを使って食べると便利だし、何よりもエレガントだと気がついたのでした。

当時は、コルレット(collerette)というギャザーのついたレースなどの飾り襟が流行していました。フォークを使えば、襟にシミを付けないで食べられるというのは大きなメリットでした。

アンリ3世
(1570年頃)
ルイーズ・ド・ロレーヌ=ヴォーデモン
(アンリ3世の王妃 1580年頃)
Description de cette image, également commentée ci-après

確かに、こんな服を着ていたら、フォークで食べ物を口に持って行くのが便利かもしれない...。

とはいえ、フォークを使いたがらない人も多かったようです。右手にナイフを持って、左手にフォークを持つというのは使いにくい。まして、フォークの歯が2つだと、現在の私たちが使うフォークとは違って、食べ物を乗せたりはできないので、突っつくくらいしかできません。

フォークを使って食べるのは女性がすることだ、とも見做されていたようです。それに、何となくフォークを嫌うという背景もあったのでした。


フォークの語源

フォークは、フランス語ではfourchetteと呼びます。これは、fourche(ピッチフォーク)から来ています。

昔のfourcheは形が違ったのかもしれませんが、Wikipediaにはこんな写真が入っていました。つまり、土を掘ったり、干し草をかいたりする道具ですね。それの小さいのがfourchetteでフォークというわけです。



もともとは、木の枝で作った道具で、ミズキ属の樹木で作ったものが最高とされていたとのことです。

fourcheという道具では、歯の数は決まっていないようです(こちら)。


フォークには悪魔のイメージがある?

キリスト教文化では、こういう形を見ると悪魔を連想するようです。fourche du Malin(悪魔のピッチフォーク)あるいは悪魔のqueue fourchue(先が2つに分かれた尻尾)に似すぎたからだと書いてありました。

悪魔が鍬のようなものを持っているのは思い浮かびます。しっぽが分かれていましたっけ? 現代では仮装するときのために、こんなのが売られていました。


尻尾は矢印に見えるのですけれど...。


ちゃんとした絵を見ないと悪魔らしさがないですね。地獄にいる悪魔たちです。

 

やはり、悪魔には尻尾があって、棒を持っているのですね。


少し前のことですが、「悪魔のフォーク」と呼ばれる雑草があるのを見つけました。

正式の名前はGéranium Herbe à Robert (ヒメフウロ)。私の庭にはいくらでも生えてくる草で、ドクダミのような匂いがします。薬草なのでした。

 

この草には、マリア様の針、マリア様のピンなどと色々な名前が付いていたのですが、その中に「悪魔のフォーク(fourchette du diable)」というのもあったのです。

なぜそう呼ばれるのかは、花が咲いた後にできる実にありました。



2つが対になって、2股のフォークのような形になるわけです。2股のフォークが嫌われたのは、同じような発想からなのかもしれません。


現在のようなカテラリーがそろったのは18世紀

カトリーヌ・ド・メディシスがイタリアからフォークを持ち込んだのは16世紀半ば。フランスで本格的にフォークを使うようになったのは17世紀末から。

その間に、フォークの歯は2つから4つになって、使いやすくなってきました。歯が2本でなくなったのは悪魔のイメージから遠ざかるためだったという説もあるそうですが、歴史家は否定しているそうです。

もっとも、太陽王と呼ばれたルイ14世(在位 1643~1715年)の時代の食卓にはフォークが出ていましたが、誰も使わなかったようです。

王様が手づかみで食べるのを好んだので、一緒に食事する人たちは... 最近の流行りの言葉でいうなら忖度(そんたく)して、王様の真似をしてフォークを使わなかったのでした。

フォークが完全に定着したのは18世紀になってからのようです。スプーンの方も、18世紀には金銀細工師たちが色々な形のを作るようになりました。デザート用、コーヒー用、紅茶用、アイスクリーム用、そしてスープ用。赤ん坊のためにフルーツジュース用のスプーンなどまでできたのだそう(先がつまっていて、穴が開いている)。

18世紀には、少なくとも裕福な階層の食卓には、色々な種類のナイフが登場しています。チーズ用、魚用、バター用など。

色々な陶器が登場するようになったので、それに合わせてカテラリーが作られました。

金持ちは銀のナイフを作らせ、その下の階層では銀メッキ、貧しければ鉄製という具合。貧しい親にはナイフは結婚祝いでした。ナイフは縁を切るという縁起の悪いものともされたのも、この時期だったようです。ナイフの生産者は、凝っていたり、斬新だったりするナイフを作って成功を収めます。

でも、当時は、フォークとナイフは片方に置いたそうです。




フォークいろいろ

気にしていなかったのですが、現代のフォークは歯の数が4つなのが普通。そして、魚料理を食べるときのフォークは3つが普通。エスカルゴを食べるときは歯が2つでないとダメ。

フォンデュで使う串のようなものもフォークと呼ぶのでしたね。






続き:
その6 1610年5月13日、テーブルナイフの先は丸くなった


シリーズ記事【フランスの食事の歴史】目次




ブログ内リンク:
★ 目次: レシピ、調理法、テーブルウエアについて書いた記事
★ 目次: フランスで感じるキリスト教文化
フランス人から包丁をプレゼントされたら、お金を払う 2014/07/25

外部リンク:
☆ Wikipédia: Fourche » ピッチフォーク
☆ Le costume historique: Collerette (pour femme)   | Collerette (pour homme)
☆ Wikipédia: Collerette (costume)
Pourquoi une fourchette a quatre dents ?
Pourquoi les fourchettes à poisson n'ont-elles que trois dents ?
Les Images du Diable (1000 - 1500) » Les Images du Diable (1500-2000)
Alimentarium : La fourchette
☆ Musée Gourmandise: Fourchette (ベルギーのサイト)
CATHERINE DE MEDICIS De la fourchette aux lames sanglantes
☆ 
イタリアのパスタがフォークの歯を4本にさせた【書籍】「フォークの歯はなぜ4本になったか」ヘンリー・ペトロスキー


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コメント
この記事へのコメント
C'est nickel ?
ナイフや フォークを手にしたら
まず 金属の成分表示を確認

18-8 や18-10 18-12の表示があれば合格
なければ 失格

チェスの用語に 「フォーク」ってあるけど
先が 二つに別れてるなら 納得

ちなみに 忖度、、
「気遣い無用」と おっしゃる王様なら

Nickel chrome  なのだ ♪
2017/04/11 | URL | たかゆき  [ 編集 ]
Re: C'est nickel ?
v-22 たかゆきさんへ

>ナイフや フォークを手にしたら  まず 金属の成分表示を確認

はぁ...、私は気にしたことがありませんでした。クロムとニッケルの含有量のことで、錆びにくいということですか?

>チェスの用語に 「フォーク」ってあるけど 先が 二つに別れてるなら 納得

チェスにもありましたか。フォークというときには歯が幾つなのかと気にしたのですが、もともとのイメージは2股ということだと思うのです...。

>「気遣い無用」と おっしゃる王様なら Nickel chrome  なのだ ♪

なるほど...(笑)。
2017/04/11 | URL | Otium  [ 編集 ]
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