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2017/05/12
少し前から書いている、ディジョン市(ブルゴーニュ地方)にあるノートルダム教会の外壁にある彫刻の続きです。

シリーズ記事目次 【これはサラマンダー? あるいはドラゴン?目次へ
その4


願いごとをしながら左手でフクロウの彫刻を撫でたとき、すぐそばに変なものが待ち構えているというお話し。下の写真で、赤い矢印を付けた部分にある小さな彫刻です。



この小さなモンスターに願いごとを食べられてしまわないように気を付けるというものなのですが、ステンドグラスの窓枠に彫られている小さな動物は何か?...


サラマンダーではなくて、ドラゴン?



私は、ずっとサラマンダー(salamandre)と呼んでいました。サラマンダーなどというのは私には無縁の動物でしたから、自分で連想したはずはありません。日本人にディジョンの町を案内してもらったことはないので、誰かディジョンに住む友達か、ブルゴーニュ大学がオーガナイズした見学のときか何かで教えてくれたのだろうと思います。サラマンドルというフランス語も、そのときに覚えたはず。


伝説上のサラマンダー(salamandra)とは何か?

Wikipediaでは、次のように説明していました:

四大精霊のうち、火を司る精霊・妖精(elementals)。 手に乗る位の小さなトカゲもしくはドラゴンのような姿をしており、燃える炎の中や溶岩の中に住んでいる。
サラマンダー (妖精)


でも、これを書きながら友人に話したら、あれがサラマンダーのはずはない、と断言されたのです。ドラゴン(dragon)だと言うのです。

インターネットでフランス情報を調べていたら、ドラゴンとしている人もいたのですが、サラマンダーとしている人の方が多いように感じたのですけれど...。


実在のサラマンダー

両生類有尾目のサラマンダーは、フランスにも生息しているので、それとは違うということ?

気持ち悪いので小さな画像で入れますが、こういう4つ足の動物。平気な方は画像をクリックして拡大画像をご覧ください。

Salamandra salamandra 

確かに、ノートルダム教会の壁に彫られている小さなモンスターとはかなり違う...。

伝説のサラマンダーならまだしも、本物に似ていたら気持ち悪いと思うのですけれど、好きな方もいらっしゃるのかな?...





フランソワ1世のサラマンダー

サラマンダーと聞いたら、フランソワ1世のシンボルとなっているサラマンダーを私は思い浮かべます。ノートルダム教会の壁に潜んでいるのとは向いている方向が逆なだけで、よく似ているではありませんか?




耳のようなものが付いているのまで同じですよ~。

でも、鼻のところが違う、と言う友達がいました。



サラマンダーの鼻ずらは、ノッペリしているものだと言うのです。

フランソワ1世のサラマンダーの左右を逆転させた画像で検証してみると、違うかな?... 鼻の部分に注目すると、ノートルダム教会のモンスターは竜に見えてくる...。



口から火を噴いているように見えるところが同じでは?... と言ったら、サラマンダーの場合は、口から出ているのは舌で、火は体の回りに描かれている、とのこと。


だんだん、ドラゴンと呼ぶべきかな、と思えてきました。

ノートルダム教会の彫刻はサラマンダーではない、というのには理があるかなと思えたのは、時代的な問題です。

ブルゴーニュ公国(843年 - 1477年)の都だったディジョンにノートルダム教会が建てられたのは13世紀前半でした。モンスターがいる外壁の部分は、14世紀か15世紀に増築された礼拝堂の部分で、そのときに彫られたのだとしても、サラマンダーをエンブレムにしたフランソワ1世より前の時代なのです。

フランソワ1世(François Ier de France 1494~1547)がフランス国王だったのは、1515年から47年まででした。


ドラゴンとは、なに?

小さなモンスターはドラゴン(dragon)だったとして、はて、ドラゴンってどんな動物だったっけ?

フランス国立図書館で行われた中世の動物に関する展示会「Bestiaire du Moyen Âge」のサイトに入っているドラゴンの絵のコーナーを眺めてみました。絵をクリックすると拡大画像と説明が出ます。


聖ゲオルギオスは竜の退治で名高いので、この聖人の絵にはドラゴンが一緒に描かれます。

Paolo Uccello 047b.jpg
Vouivre représentée dans Saint Georges et le dragon de Paolo Ucello, 1450


ドラゴンには背中に羽を付けた形のイメージなのではないか、としつこく思うのだけれど...。


そっくりの動物を見つけた

ディジョンのノートルダム教会が建てられた時代のモンスターの画像を探していたら、目を引くものが見つかりました。

ノルマン・コンクエストを描いた「バイユーのタペストリー」に入っている画面です。



ヘイスティングズの戦い(1066年)でのハロルド2世の死を描いた画面。イングランド軍の軍旗なのですが、アップすると、こちら:


A dragon (known later in heraldry as a wyvern) which appears twice in the death scene of King Harold II on the Bayeux Tapestry depicting the Battle of Hastings in 1066.


よく見ると、背中には羽のようなものが付いているようにも見えますね。イギリスの紋章に「ワイバーン」と呼ばれるドラゴンがあるのですが、それの前身らしい。つまり、この軍旗はサラマンダーのようにも見えますが、ドラゴンなわけなのでした。

ワイバーン
Héraldique meuble Dragon (wyvern)
Dragon héraldique (ou Wyvern)
ウェールズの旗
ウェールズの旗


「ワイバーン」というのは、フランス語ではvouivre。中世にはブルゴーニュでは好んで使われたモチーフのようなのでした。インターネットで出てきた情報の中には、ディジョンのフクロウの傍にいる動物に「vouivre」という単語を使っている人もいました。私も知ったかぶりでそうフランス人に言うことにしようかと思ったのですが、ヴーイヴルなんていう発音はすぐに忘れてしまいそう...。

どっちみち、伝説上の動物。ディジョンのノートルダム教会に潜んでいる小さなモンスターは、サラマンダーでも、ドラゴンでも、どちらでも良いのですが、今後はドラゴンと呼ぼうかと思います。何人かのフランス人の友達に画像を見せて聞いてみたら、みんなドラゴンと呼んでいたので。


シリーズ記事 【これはサラマンダー? あるいはドラゴン? 】目次


ブログ内リンク:
★ 目次: ブルゴーニュの古都ディジョンの観光スポットや特産品など
やっと見ることができた「バイユーのタペストリー」 2009/11/06
★ 目次: 縁起物や迷信について書いた記事 (フランスを中心に)
★ 目次: ブルゴーニュの歴史

外部リンク:
Wikipedia: サラマンダー | ファイアサラマンダー | サラマンダー (妖精)
Wikipédia(仏語): Salamandre (amphibien)| Salamandre (animal légendaire)
Dijon, capitale de la Bourgogne
☆ BnF: La tempérante salamandre aux origines de la devise de François Ier
☆ Wikipedia: ドラゴン » Dragon européen
☆ Wikipedia: ワイバーン »  Wyvern »  Vouivre
la tapisserie de Bayeux, naissance de l’héraldique
L'étrange mort du Roi Harold II
Wikipedia: List of English flags Historical flags / National flags and ensigns
知っておきたい伝説の英雄とモンスター (閲覧回数制限あり)


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コメント
この記事へのコメント
ゆるキャラ ♪
オラには
ドラゴンでも サラマンダーでも ないように見える、、

というわけで
新しい キャラクターとして
ディジョゴン とか 名のらせちゃいますね
日本なら。。。

願い事といえば 
伊勢神宮の正宮は「私幣禁断」
お賽銭や 個人の願い事は禁止とか
http://jp.tadaimajp.com/2016/03/ise_shrine_rules/

イエスキリストは 彼の死後
教会を作れとか 己の像を作って崇拝しろとか
おっしゃってない はずですけど、、、

ディジョゴンは 何を想っているのだらう ♪
2017/05/16 | URL | たかゆき  [ 編集 ]
Re: ゆるキャラ ♪
v-22 たかゆきさんへ

>ディジョゴン とか 名のらせちゃいますね 日本なら。。。

良い命名ですね~♪ このモンスターは名前も付けてもらえないみたい...。調べてみた結果では、願いごとを叶えてくれるフクロウばかりをクローズアップしていて、フランス人はドラゴンでもサラマンダーでもどうでもよいらしいと感じました。

>伊勢神宮の正宮は「私幣禁断」
お賽銭や 個人の願い事は禁止とか


伊勢志摩サミットの関係で、全く興味も持っていなかった伊勢神宮のことについて知り、それほど大切な所だったのかと認識を新たにしたのが最近の出来事だったので、興味深い情報をいただきました。

日本では色々な決まり事があって、その宗教を信じているわけでもないのに、しきたりには従うですよね...。

九州で仕事をしていたとき、親しい人が亡くなったと教えられて驚き、葬儀に行くために日程を変更して東京に行く飛行機を予約したのですが、翌日になってから喪服が必要なのだと気がつきました。パニック状態でかけつけたいのだから喪服なしてもう許されるのではないかとも思ったのだけれど、日本では許されないだろうと喪服を調達しました。

フランスでばったり出会った人から、知っている人が亡くなって、その日の午後に葬儀ミサがあると知ったときには、そのときの服装のままで参列しましたが、誰からも咎められることもなかったのです。気持ちよりも、形式を重んじる日本?!...

>ディジョゴンは 何を想っているのだらう ♪

ここで何をしているのだろうか、なんて考える私みたいなバカな人がいることをあざ笑っているように思われませんか?
2017/05/18 | URL | Otium  [ 編集 ]
お作法 ♪
剣道でも弓道でも 茶道でも華道でも
そして 神道でも 「道」とつくものには
必ず 作法がついてまいりますね。。。

決められた 所作には 人の動きが
美しく かつ 洗練されているように
見えるための 先人の知恵が隠されているのかも。。

>喪服を調達しました。
難儀なさいましたね
遠方からお出でになる方のために
式場の中か近くに 貸衣装店があれば良いのにと
ぼくは いつも思っているのだ♪

>バカな人がいることをあざ笑っているように思われませんか?

ぼくの直感では ディジョゴンの性格は 良し、、
「後ろの正面 ば〜か だ」 なんて言いませんとも

神は細部に宿る
http://neoearthlife.com/god-is-in-the-details-523.html
よって
ぼくも 細部に 拘るタイプ
あまり 見向きもされないディジョゴンは
もしかしたら 神の使いかもしれません ♫
2017/05/18 | URL | たかゆき  [ 編集 ]
Re: お作法 ♪
v-22 たかゆきさんへ

>「道」とつくものには 必ず 作法がついてまいりますね。。。

そうですね。しかも、その中には流派があって、それが違うと、同じ道でも非常に嫌な顔をされる。私が経験したのは華道と茶道だけですが、お稽古に通う場所で流派を変えたら、先生の神経を逆なでするのだろうと気がついて、2つともやめました。宗教でも、内部分裂の方が憎み合いの度合が大きいと思うので。

>遠方からお出でになる方のために
式場の中か近くに 貸衣装店があれば良いのにと
ぼくは いつも思っているのだ♪


最近のフランスでは中世祭りブームで、会場の入り口で貸衣装屋さんが店を開いています。そういうのは遊びだから良いと思いますが、急に駆けつける葬儀で、衣装、のし袋、ピンとした紙幣などを用意したり(しかも多すぎても少なすぎても問題をおこす)...。私は「気持ち」を最も大切にするので、こういう形式にこだわる風習には非常に抵抗があります。

>ぼくの直感では ディジョゴンの性格は 良し、、「後ろの正面 ば〜か だ」 なんて言いませんとも

私にも悪者には見えないです。

中世に建てられたロマネスク教会や民家にある彫刻を眺めるのが好きです。聖書のお話しの1コマというのは自然ですが、どうしてこういうのが、ここにあるのだろうというようなのが面白い。

>もしかしたら 神の使いかもしれません ♫

面白いですね(^^♪ 専門家は色々な解釈をしますが、それぞれが色々な目で見ることが許されると思います。

>神は細部に宿る

私は、神は人間の中に宿るものだと思っております。
2017/05/19 | URL | Otium  [ 編集 ]
かみ ♪
>同じ道でも非常に嫌な顔をされる。

書道を嗜んでいますけど、、
筆から 紙から 墨まで ウルサイですね
先生の書が ぼくの 好みでなかったし
この程度か と 感じて 独学してます。。。

>ピンとした紙幣などを用意したり

不祝儀のときは 折り目のついたお札と 認識してましたが
宗教によって 違うのかしら、、、
https://happylifestyle.com/4501

>聖書のお話しの1コマというのは自然ですが

聖書 大好きです(ただし 新約)
スペイン語の お勉強に 英語対訳の聖書を
読み始めたのがきっかけですが
外国語の聖書でも ぼくに しっくりくるものと
そうでない 表記があるのが 
それぞれの 出版社やバージョンによって
異なるのが面白い

>私は、神は人間の中に宿るものだと思っております

同感です
ちなみに 神は ぼくの 指先に宿っているようです
仕事で手先を駆使する ぼくは 日々感謝

神が細部に宿るとは、、
自分の行為に常に意識的であるとき
己を通じて 己を超えた大いなる存在(神かも)と
呼ばれる全体意識の偉大な力がこの世界に
表現される  と リンクにありましたっけ。。

そういえば 恩師の教授が 手術で
ここ一番の ときに
ジーザス!!って 仰ってましたけど
教授の 指先にも 神は 宿っていたようです ♪





2017/05/19 | URL | たかゆき  [ 編集 ]
Re: かみ ♪
v-22 たかゆきさんへ

>先生の書が ぼくの 好みでなかったし
この程度か と 感じて 独学してます。。。


書道のことは何も知りませんが、優れた書をたくさん眺めて、精神的な境地を求めたら、中途半端な先生はいない方が良いのではないですか?...

>不祝儀のときは 折り目のついたお札と 認識してましたが

何かあったようには思ったのですが、そういう決まりなのですね。日本の銀行は親切で、こういうお札が欲しいなどというリクエストが出来るところはスゴイ!

フランス人たちはイスラム教の規律が現代に即していないと批判しますが(女性は車を運転する権利がないとか)、そういう議論を聞きながら、日本の方が細部に至るまで昔ながらの因習が根強く残っていると思ってしまっております。女性が頭を隠すのも、そういう風に暮らしていたら、ベールを被らなかったら居心地が悪いのだろうと思うし...。

>それぞれの 出版社やバージョンによって 異なるのが面白い

細かなところにも違いがありますか。哲学者になった日本の友人が、ラテン語の聖書を翻訳したときに重大なミスをしていたと指摘していたのを思い出します。原典ではイエスはイスラエル民族の神と書いてあるのに、世界の神という風にしたということだったような...。

>神は ぼくの 指先に宿っているようです
仕事で手先を駆使する ぼくは 日々感謝


フランス人のぶきっちょさには驚くものがあります。採血するときに私が腕を差し出すと、緑色の静脈が浮き上がっているのに、看護婦さんがズブズブと、あちこちに注射器をさして痛い思いをさせるので、これは何なんだ~?! と思ったことがあります。歯医者さんで治療を受けようとしたときには、私が日本で治療した歯を眺めて、素晴らしく上手に処理しているとかなんとか言って感心している歯医者さんがいました。感心なんかしていないで、早く口を閉じさせて欲しいと腹がたった思い出です!

>恩師の教授が 手術で
ここ一番の ときに
ジーザス!!って 仰ってましたけど


そういう場合、フランス人の医師は何と言うのでしょうね?...

手術に失敗して患者が息絶えてしまったのを見た時には、フランス語なら「Mon Dieu !」、英語なら「Oh my God !」と叫ぶのではないかと思いつくのですけど!...
2017/05/19 | URL | Otium  [ 編集 ]
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