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2017/07/27
フランス人は何にでも文句を言います。

政治について、税金の使い道については非常に厳しく批判する。友人たちと集まったときには、行政がしていることの批判を始めると語気が荒いので煩くてたまりません。なんであんなに議論が好きなのだろう?...

彼らが喧々諤々と政治や社会保障について文句を言っているのを聞いていると、つい「日本なんか、もっとずっと酷いよ~」と言いたくなります。

悪い例を挙げられても、フランス人たちは一向に気にしないみたい。「そうか、フランスはそんなに悪い国じゃなかったんだね」と言った人には出会ったことがありません。日本の例を挙げても、質問も返してこないほど無関心。

先日の友人たちとのおしゃべりでは、失業保険で生活していたけれど、あと2年働かないと老齢年金がもらえないということで、役場に雇われて2年間だけ働くことになった人の話題が出ました。

まだ50代半ばの男性なので、年金支給まで2年というのは短すぎると思ったのですが、若い頃に軍隊に入っていたので、働いた年数の計算が優遇されているのだそう。生命の危険がある戦場に赴任すると、1年働いたのが3年分に計算されるとか、そういうのがあるのですよね。

でも、彼の報酬は最低賃金(SMIC)の時給なのだそう。毎年スライド制で上がるもののSMICの賃金が低すぎる、とフランス人たちは文句を言う。まあ何とか生活していける金額に定めている。汚いやり方だ、とか怒っている。

フランスの最低賃金はそう悪くもないのだし、パートタイムで働いても年休や社会保障が付くのだから、日本よりははるかに労働条件が良いと思うのですけどね。

話題に出たSMICで2年働くという人は、村の道路や墓地などの除草をしたりする肉体労働の仕事でした。雇ったのは小さな村なので、仕事は大してないし、村の予算もないので、彼をフルタイムでは雇えない。とすると、収入が少ないでは? と思ったら、雇用促進支援プログラムの枠内で雇用されるのだと説明されました。

週の半分だけ働き、役場からはフルタイム労働の半分に相当する報酬が払われるのだけれど、それと同額の援助が国から出るので、SMICの1カ月分が月収として支払われるのだそう。

つまり、週に2日半働いて、月に20万円近い収入を受け取るわけ。羨ましく思ってしまった...。

こんな手厚い弱者の援助をしているし、いくら経済不況でも労働条件を悪くすることはしないから、フランス経済は落ち込んでいるのだろうと思うのですが、それでも国がつぶれないでいるのだから良いではないですか?


最低賃金

日本のニュースを読んでいたら、最低賃金の引き上げが話題になっていました。最低賃金が、ここ2年連続で3%引き上げられたとのこと。

現内閣の支持率が下がったという報道を隠し切れなくなったらしい今、政府だって良いこともやっているのだというニュースをクローズアップしたかったのかな。NHKのニュースでは、「大幅な引き上げ」と記述していました。3%アップで「大幅!♪」と言うのはオーバーだと思ってしまった...。
 
全国平均で、時給が25円値上がりしたとのこと。でも、そんな程度では日本の最低賃金は先進国並みにはならないですよ。

日本にも「最低賃金」というのがあると知って、調べてみたことがありました。1ユーロが170円という為替レートだったときなので、フランスの最低賃金を円に換算してギャフンとしました。フランスでは労働条件が良いだけではなく、最低限保証されている時給も日本よりずっと高いのでした。


このたび日本で発表された17年度の最低賃金は、全国平均で848円。都道府県で異なるシステムなので、最も高い東京が958円で、最も低い宮崎と沖縄が736円でした。

フランスの最低賃金としては、SMIC(Salaire minimum interprofessionnel de croissance)というのがあります。物価と平均賃金の伸びに連動して、最低賃金が自動的に引き上がるスライド制のシステム。

フランスと日本の物価を比べると、1ユーロ=130円くらいかな、と私は感じています。今の為替レートはそのライン。それで計算してみました。

今年(2017年)のSMICは、全国一律で時給9,76ユーロ(約1,269円)。フランスの時給の最低基準は、日本の大幅値上がりしたという最低賃金の1.5倍です。


ヨーロッパの中で、特にフランスの最低賃金が高いというわけではありません。フランス人たちが給与が高いことで羨ましがるのはルクセンブルクとスイス。国境に近いフランス側に住んで通勤している知人も何人かいます。

1カ月の労働の最低賃金は、フランスでは週35時間労働で計算して、1,457,52ユーロ(約19万円)。

EU圏内での最低賃金が高い国のランク付けでは、フランスは第6位というところでしょうか。トップはルクセンブルクで、最低月収が1,923ユーロ(約25万円)。


フランス人たちは、最低賃金なんて、なんとか生活できて、文句を言わないレベルで作っていると批判するのだけれど、日本では、その計算での報酬を得ないで働いている人たちがたくさんいると思うのですよね。私自身の経験も含めて!

それに、日本の最低賃金というのは、フランスのように厳格には守られていないのではないかと思います。時給ではなくて、月給制で働いたら、どのくらい酷い報酬か、残業しているから全体として満足できる給料をもらっていると思っているかもしれない...。


時間当たり賃金(製造業、2014年)|データブック国際労働比較2016|JILPT


貧富の差

ひところの日本では、大半の人たちが中流の生活をしていると思っているという時代がありました。いま思うと懐かしい...。入社すれば終身雇用という安心感があり、会社は従業員を家族のように大切にし、従業員は会社に忠誠心を持つという日本の良さがあった時代...。

それが日本経済を支えた原動力だったと思うのですが、時代は変わりましたね...。

最近の日本では、貧富の格差が酷くなっていると感じます。フリーで働く場合の報酬が劇的に低くなったと見ているのですが、東京の繁華街に行くと消費者であふれかえっているので、豊かな人たちがいるらしいのは確か。


貧富の差と言えば、フランスの方が日本より激しいのではないかという感覚を持っていたのですが、日本は先進国の中ではかなり貧富の差が大きい国なのでした。

フランスで貧富の差を感じるのは、住んでいるお家の違い。お金持ちと言えば、広大な庭園がある城に住んでいる人たちがかなりいるからです。

下は、個人が所有している城としてはもっとも規模が大きいヴォー・ル・ヴィコント城

ヴォー=ル=ヴィコント城
Château de Vaux-le-Vicomte

城の敷地は500ヘクタール(フランス式庭園が33ヘクタール)、建物の屋根の面積は2ヘクタール。

もっとも、こんな文化遺産をご先祖から相続すると、何かに利用しないと維持していけない。この城もミュージアムとして一般公開されています。

映画のロケやレセプション会場として使わせたり、年間28万人の見学客があるので収入は入るのですが、建物の維持費やスタッフの人件費が必要なので、結果としては毎年40万ユーロ(約5,200万円)の赤字経営なのだそう。これほどの城ならのでメセナもいますが、こんな城を維持できるほどお金持ちということですよね?...

外部の人が出入りしている城には持ち主が住んでも楽しくないだろうと思ったのですが、オーナーの貴族は城の建物の一部を住居として使っているようです。


日本では、6人に1人が貧困

私は東京での生活費しか分かりませんが、ご自慢する引き上げられた最低賃金の時給が千円にも届かないというのは酷いと思う。だって、日本は要らないものは安いけれど、食事や住居費など、最低限必要なものがフランスよりずっと高いのですよ!

日本人はフランス人ほどには食べないし、狭い家に住んでも耐えるし、一点豪華主義で満足できる国民性があるから、そんなに貧しいとは感じていないかもしれないですけれど。

日本の貧困率は1985年には12%だったのに、2015年には15.6%。
ひとり親家庭の貧困率は50.8%だそうです。

母子家庭が貧しいというのは本当なのですね。東京の友人の中に、ご主人に家出されて、女手一つで息子さんを育てている人がいるのですが、子どもさんの遠足の参加費が出せないとか、高校に入れるお金がないとか言っていました。彼女の仲間の単身で子育てをしている人たちの大半は、義務教育が終わったらもう働いてもらうケースが多いのだと言っていた。

フランスでは、女性たちが簡単に離婚するのですが、あれは生活費の心配がないから決心できるのだろうと感じています。

あれだけ超お金持ちに見える人たちがいても、日本より状態が良いのは、最低限の生活をしている人たちがそんなに貧困ではないからなのでは? フランスのニュースで、生活保護を受けている人たちの映像が出るのを見ると、私が東京で生活している環境よりずっと豊かそうに見えてしまっています。

最近の日本では、どう使われるのかも怪しげな国々にまで、海外支援に億とか兆の単位で支払っているのですが、日本国内の人たちを助けようとは思わないのかな?...


世界141カ国を比較した「収入不平等指数(ジニ係数)についてのランキング」を見てみました。

日本の収入不平等指数は、37.9%で、世界141か国の中で73位となっていました(2011年)

フランスのジニ係数は30.6%で、世界117位。


経済的な格差があると、普通なら、社会の不満となって暴動がおきる。

ジニ係数が60%以上だと「危険ライン」で、40%以上は社会騒乱の「警戒ライン」とされているのだそう。最近の日本の政策では、どんどん格差を広げている感じがするので、警戒ラインに入っているのではないかな...。

日本人は我慢強いから耐えるのかもしれない。あれだけやりたい放題、嘘八百を並べても、今の内閣を支持する人が3割もいるというのは、政治家が何をしても、まず批判する傾向にあるフランスではおこえないことだと思う...。


外部リンク:
1日5人が餓死で亡くなるこの国
飽食日本で起こった悲惨な餓死事件まとめ
悪化する日本の「貧困率」 2014.08.29
世界・収入不平等指数ランキング
国の所得格差順リスト

最低賃金、過去最大25円上げ=全国平均で848円-政府目標3%を達成 2017/07/26
社説:最低賃金の引き上げ それでもまだ低い水準だ 2017/07/27
☆ 厚生労働省: 地域別最低賃金の全国一覧
労働政策研究・研修機構: データブック国際労働比較2016 » 5. 賃金・労働費用
国際比較で考える日本の最低賃金 課題は「地域」「産別」の役割発揮にあり 2017/06/14
国際水準の「最低賃金」に及ばない時給引き上げ  2016-10-02
世界一「最低賃金」の高い国は? 日本12位、韓国13位 2016/02/21
国連が衝撃発表!国連「日本の最低賃金は先進国最低。生存基準を下回っている」フランスの最低賃金は9.43ユーロ(約1311円) 2014.01.13
☆ Wikipedia: 最低賃金 » Salaire minimum
☆ Wikipedia: Salaire minimum interprofessionnel de croissance
☆ Wikipedia: 各国の最低賃金の一覧
「月給制で働く人」が見落とす最低賃金の基本

☆ なぜ、「人づくり革命」に違和感を覚えるのか? 2017/08/08
☆ 悪評紛々! 安倍政権の「人づくり革命」 2017/08/10
☆ 人間をマシンに…安倍政権「人づくり革命」の露骨な魂胆 2017/08/12

安倍内閣の支持率、40%〜30%台に下落 各メディアの世論調査、加計問題が響く? 2017/06/19
マクロン仏大統領の支持率54%、前月から10ポイント下がる 2017/07/23
CHÂTEAU DE VAUX LE VICOMTE ; Une pme unique, qui a l’histoire en héritage


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カテゴリー: 日仏の比較 | Comment (2) | Top
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この記事へのコメント
素晴らしいシャトーですね!
このシャトーの主人フーケは、ルイ14世の不興を買い(嫉妬し投獄した・ヴェルサイユ宮殿のもとになった)没落した、と書いてありましたが、その後の持ち主はどなたなのでしょう・・?

ヴェルサイユ宮殿といえば鏡の間。
ルイ14世の治世に、国策会社として始まった、現「サン・ゴバンの鏡」は、日本製に比べ、「実物に近い色で映る」んだそうですね(経験したのは夫)。

思ってもみなかったので、びっくりです。日本製は(メーカーにもよるでしょうが)、若干、薄く映るんだとか。
へぇ〜〜でしたが、Otiumさんちの鏡は、どちらのですか? とはいっても、我が家の鏡のメーカーは知らないのですけれど・・。(汗)

それにしても、
ホント、日本は外面ばかりではなく、国内の福祉などをもっと改善すべきです!
2017/07/29 | URL | フォルナリーナ  [ 編集 ]
Re:
v-22 フォルナリーナさんへ

>その後の持ち主はどなたなのでしょう・・?

貴族の苗字の中でも耳にすることが多いド・ヴォギュエ家の所有とは知っていましたが、いつからなのか興味を持って調べてみました。

ここもフランス革命で没収されたのだとは思います。1875年に競売にかけられて、砂糖産業で財をなしたアルフレッド・ソミエ氏が落札。1967年、ソミエ氏のひまご息子であるパトリス・ド・ヴォギュエ氏が、この城を結婚祝いとしてプレゼントされたのだそう。現在の城主(複数)は、それから5代目に当たるとのこと。

>ヴェルサイユ宮殿といえば鏡の間。ルイ14世の治世に、国策会社として始まった、現「サン・ゴバンの鏡」は、日本製に比べ、「実物に近い色で映る」んだそうですね

そうなのですか。サンゴバンは有名な企業なので、私も名前は昔から聞いてましたが、そんなに古い歴史があった会社なのですね。

アメリカの富豪と結婚したフランス人女性が買った城を見学したとき、ヴェルサイユ宮殿の鏡の間を修復している技師に、同じ技法で作った鏡で壁面を覆わせたというサロンを見せられて、どこか普通とは違って美しい鏡だと思ったので、なるほどと気がついた次第です。

>Otiumさんちの鏡は、どちらのですか?

気がついてみると、フランスの家には鏡が多いかもしれない。私の家にも、大小、たくさんあるのですが、気にしたことがありませんでした。2つの暖炉にはアンティーク調の大きな鏡がのっていますが、どこが作ったかというほどのものではないはず。今後、由緒ある城などを見学したときには、鏡にも注目しようと思いました。

>ホント、日本は外面ばかりではなく、国内の福祉などをもっと改善すべきです!

「お金がなくてどうしよう…」などという生活とは無縁のフォルナリーナさんがそう言ってくださるのは、とても嬉しいです♪
2017/07/30 | URL | Otium  [ 編集 ]
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