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2017/08/27
先日、なかなか良い映画をテレビで見ました。

映画: L'aigle et l'enfant / Brothers of the Wind / 風の兄弟

巣から落ちた赤ちゃん鷲(ワシ)を拾い、飛べるようになるまで育てたルーカス少年のお話しです。

アベルと名付けた鷲を育てることが、ルーカスの生き甲斐になりました。森林管理官ダンツァーは、そんな彼に鷲の育て方を教えてくれます。

野生動物を育てた子どもの感動的な映画はよくあるのですが、この映画のストーリーはよく出来ていると思いました。

ワシと少年には、共通する境遇があるのです。

ワシは父親を亡くしてから、母が運んでくる餌を独占しようとした兄から巣を追い出されました。

ルーカス少年は母親を火事で亡くしていて、父親からは愛されていない。心を閉ざしている少年は、ほとんど口をききませんでした。美しい自然が広がる山岳地帯で繰り広げられながら、少年の痛いほどの孤独が伝わってきました。


映画予告編 ↓


L'AIGLE ET L'ENFANT Bande Annonce VF (Jean Reno - 2016)


ワシは獰猛な鳥ですし、ヒナのときにも大きいのですが、本当に愛らしく見えました。映画で使っていた鷲(aigle)は、品種でいえばAigle royal(イヌワシ)なのだそう。ヨーロッパにいるワシの中では最も大きく、翼の全幅は190~230センチ、体重は2.9~6キロにもなるとのこと。

映し出されている風景が素晴らしく美しい。ロケはアルプス山脈東部のチロル地方は行われたそうです。チロルは1度だけ旅行したことがあるのですが、こんなに雄大な風景は見ていませんでした。


↓ こちらの動画は、色が少し変になっているし、ナレーションもないし、勝手に音楽を付けているのも気に入らないのですが、もう少し長く映画を見ることができます。


Brothers of the Wind 2015 - Lucas & Abel - Here Tonight


これはオーストリアとスペインの共同制作の映画(2015年)ですが、主人公の少年を演じているのはスペインの俳優で、森林管理官はフランスの俳優ジャン・レノ。2人とも表情が豊かで、無言のときにも感情を伝えるような素晴らしい演技をしていました。

アルプスの山の中に、ラテンアメリカの子どもに見えてしまう少年が住んでいるというのには違和感がありますが、かえって非現実的な雰囲気を出していて良かったかもしれない。

私がアルプス地方を旅行したときに見て喜んだことがあるbouquetin(アイベックス)とワシの葛藤シーンなどもあって、よくぞ映像に収められたと感心したのですが、撮影中にあったハプニングも撮影していたようです。鷲になったかのように空を飛んでいるのを見せる場面では、超小型カメラを使ったとのこと。

撮影の様子を少し見ることができる動画 ↓


"L'aigle et l'enfant" au cinéma


カインとアベルのお話し

この映画は、フランスでは「L'aigle et l'enfant(鷲と子ども)」というタイトルでしたが、オリジナル・タイトルは「Brothers of the Wind」だったようです。

フランス語のタイトルでは単数形で「子ども」なのですが、英語の方では兄弟の複数形。ルーカス少年には兄弟はいませんから、この「兄弟」とは鷲の兄弟のことでしょうか?

鷲にはアベルという名前が付けられていました。

テレビで映画を見たのは途中からだったので(見終わってから巻き戻して始まりを見ました)、いきなりアベルという名前を聞いたときには、どこかで聞いたことがある名前だなと思いました。

旧約聖書の『創世記』第4章に登場する、アダムとイブが生んだ兄弟カインとアベルの話しから付けた名前なのでした。

Titian - Cain and Abel
Caïn et Abel, 1542-1544, Titien


少年に拾われた鷲は、2羽の兄弟で生まれていました。

ワシの兄弟の父親が死んでしまい、母親が持ってくる食べ物が少なくなったら、兄が弟を巣から突き落としたのです。それで、落とされたワシの赤ちゃんはアベル。残酷なことをした兄の方はカイン。

フランスのサイトにある映画の解説では、どこでもcaïnismeという言葉を使っていました。仏和辞典には入っていない単語なので、日本語で何というのかは分からない。Caïnは『創世記』に登場するカインのことなので、カイン主義?

生物学で使われるcaïnismeというフランス語は、同じ時に生まれた動物の兄弟にある厳しい状況を表し、主に若い方が死んでしまうことを指す言葉でした。生存競争が厳しい動物の世界では、よくあることでしょうね。

孤児になったために猫の兄弟4匹を引き取ったことがあるのですがが、すぐに一番小さかった子猫が死んでしまいました。その時、「あの子はqueuleuだったから仕方ない」と言った友人がいました。queueは尻尾のことなので、母親のお尻から最後に出て来た子ということなのだろうと思います。これはブルゴーニュの方言で、地域によって queulot、quelonとも言うようです。

鷲のアベルも、最後に生まれていたから、残酷な兄のカインによって崖から突き落とされたのでした。まだ自分では餌を探せない時期だったので、ルーカス少年に育ててもらえなかったら死んでいたはず。

なお、宗教史で使うときのcaïnismeは、グノーシス主義の一派であるカイン派(善悪の判断を逆転させて、カインなどを善人とする)が持っていた教義を指すとのことでした。


キリスト教文化の社会では、カインとアベルの話しには重みがあるのでしょうね。

アメリカ映画『エデンの東』も、そのテーマを扱ったストーリー。ジェームズ・ディーンが苦悩する次男の役を演じている感動的な映画でした。

その話しをした友人は、モーパッサンの『ピエールとジャン』も同じテーマで、素晴らしい作品なのだと話しました。いつか読んでみたいと思います。

そこから、フローベールにしても、モーパッサンにしても、ノルマンディー地方の作家はペシミズムの傾向が強いね、ということに発展。

「あんなに雨ばかり降っているノルマンディーにいたら、性格も暗くなるよ」、と私。でも、モーパッサンは南仏のアンティーブに別荘を持っていて、ヨットなどに興じていたのだと返されました。太陽を求める気持ちは分かるけど、子ども時代に性格は形成されるのではないかな?...


鷲と少年の友情を描いたこの映画は日本では公開されていないようなのですが、こちらのサイトで詳しくあらすじを紹介していました:
☆ 映画の中の少年たち: Brothers of the Wind 風の兄弟


私のカサとサギは挨拶に戻って来なかった

この映画を私が気に入ったのは、昨年の夏には巣から落ちたカササギを育てたから親近感を持ったのかもしれません。


巣から落ちたカササギ 2016/08/19

庭にあるモミの木の高いところにあった巣から、どういう状況でカササギの兄弟が落ちてきたのか分からりません。巣には誰も残っておらず、親らしき鳥が助けに姿を見せることは一度もありませんでした。

薄情な親? あるいは、親は死んでしまっていたの?...

カササギのヒナが餌を求めて必死に鳴く姿には愛しさを覚えました。彼らにはKasaとSagiという名前を付けました。多少の体の大きさに違いがあったので、大きくて元気な方がカサ。

言ってみれば、カサはカインで、サギはアベルという関係。でも、2羽は争うこともなく、元気に育ちました。

映画の中で、ルーカス少年は、鷹が飛ぶことを学ぶようにと、両手を広げてアベルに飛び方を教えたりしていたのですが、私も馬鹿みたいにやっていました。カササギの場合は、そんなに熱心に世話しなくても、餌をやるだけで十分に成長したのですが。

カササギの兄弟は、ある日、前触れもなく飛び立っていき、その後に挨拶に来ることはありませんでした。「お育ちが悪いから礼儀正しくない」と友人に言ったら、「育てたのはあなたでしょう」と言われてしまった!

鷹のアベルも無事に育って飛び立って行くのですが、2年後だったかな、少年のもとに戻って、彼が左手にはめたグローブに鷹が止まりました。ルーカス少年は、アベルが大自然の中で生きるようにと、付けていた足輪を外します。

私のカサとサギは、どうしているのかな。時々、庭の上を飛んで来て、納屋の屋根などに止まるカササギを見かけるのですが、私が育てた鳥なのかどうか分からない...。でも、彼らは元気に暮らしているのだろうと思っています。

続き(ワシやタカなどの大きな鳥が飛び交うショーについて):
フランスで最高のテーマパークだと思う Puy du Fou

ブログ内リンク:
★ 目次: 文学者・哲学者、映画・ドキュメンタリー
★ 目次: フランスに結婚に関する風習、夫婦・家族関係、生き方
★ 目次: フランスで感じるキリスト教文化

外部リンク:
L'aigle et l'enfant, images grandioses et quête de liberté
☆ Wikipedia: L'Aigle et l'enfant » Brothers of the Wind
L’Aigle et l’enfant : le film
☆ Wikipedia: カインとアベル
☆ Wikipedia: Caïnisme | Caïnisme (biologie) » Siblicide(動物の兄弟殺し行為)
☆ Wikipedia: カインとアベル
モーパッサン『ピエールとジャン』 - 書評
☆ 知恵袋: ヘルマン・ヘッセの小説のデミアンの中にカイン主義というものが説明されています


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カテゴリー: 文学、映画 | Comment (0) | Top
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