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2010/02/10

シリーズ記事【殻つきの牡蠣(目次】 その4
クイズ: 何を見ているのでしょう? (2)


クイズにする絵画です前回の日記で、18世紀前半の絵画をお見せして、ここに描かれている人たちが何を見ているのかをクイズにしてみました。

クイズ: 何を見ているのでしょう?

考えてくださった皆さま、どうもありがとうございます!

実は1つ目以降のコメントの後、コメントを公開しない形で待ってみることにしました。

*今現在で4つのコメントをいただいているのですが、2つはみごとな正解、もうひとつは大事な点をついているコメント、もうひとつは奇想天外な発想が素晴らしいコメントでした♪

正解を出す日記を書き始めているのですが、前置きが長くなってしまったこともあるので、コメントをまだ開封せず、とりあえず絵画の背景から出します。

正解が出なかった方にはヒントになって、「なあんだ、あれか~」とコメントをくださるかも知れないし...。2度目のコメントをくださったママンさんは、「ああ、当たった~♪」とお分かりになると思います。

いい加減なことを書いてはいけないと思って調べていたら、何となく好きだったこの牡蠣を食べている食卓の絵画を通して、色々なことが分かりました。面白かったことを少しだけメモしておきます。

*例えば、18世紀の貴族の靴の踵は赤いのだと聞いていて、そんな変な靴があるのだろうかと思っていたのですが、本当に踵が赤かった!


絵の背景

クイズで使った絵は、「Le déjeuner d'huîtres」と題されています。定訳が見つからなかったので、どう訳したら良いか分からないのですが、「牡蠣の食事」とでもしておきます。

*déjeunerというのは現代のフランスでは昼食を意味するのですが、この時代には昼食はdîner(現代フランス語では夕食)と呼ばれていたはず。スイスやベルギーのフランス語では、今でもdéjeunerは朝食の意味に使われているかも知れません。作品を所有する博物館の学芸員は、この絵は「軽食(collation)」の風景と説明していました。

この作品は、寛いだ食事をするダイニングルームに飾る絵画として、ルイ15世が1735年にJean-François de Troy(ジャン=フランソワ・ド・トロワ)に注文したものでした。

*画家に支払いがなさせたのは1738年だそうですが、絵画の年号は1735年とされています。ヴェルサイユ宮殿のサイトでは、この部屋がダイニングルームとなったのは1750年としています。

注文した絵画を飾る部屋は、ヴェルサイユ宮殿で初めて作られたという記念すべきダイニングルームでした。18世紀半ばくらいまでは、ヴェルサイユ宮殿に限らず城には食堂がなかったのです。トイレの方は、中世の城にもあったのに、ヴェルサイユ宮殿には最後までなかった!!

*18世紀になるまでは、どの部屋にでも簡単なテーブル(足組みに板を乗せるだけ)を組み立てて食事していたので、食事をするための専用の部屋というのがなかったからです。この絵に描かれているテーブルも、そういう組み立て式テーブルにテーブルクロスをかけただけのものだそうです。

「狩猟からの帰り」と題されたダイニングルームに飾られるもので、ハンティング帰りの男性15人くらいが夕食をとる場所だったそうです。

その部屋について:
☆ ヴェルサイユ宮殿サイト: Salle à manger des retours de chasse
☆ Wikipedia: Salle à manger des retours de chasse

この牡蠣の食事風景の絵と対にして飾られたものとして同時に注文された絵は、Nicolas Lancret(ニコラ・ランクレ)作の「Le déjeuner de jambon(豚のもも肉の食事)」。こちらの絵には猟犬たちがいて、狩りから帰ってきてとっている食事のシーンだと分かります。

Déjeuner de jambon - Nicolas Lancret - musée Condé


18世紀のパリには牡蠣を売って歩く商人もいたそうで、人々は牡蠣に夢中になっていたそうです。牡蠣がおいしいからというだけでもなかったらしいのは、「元ぶるとんぬ」さんがコメントでずばりと指摘してくださいました♪

北の海からパリまで新鮮な海産物を運ばれるぶ馬車は「chasse-marées(直訳すれば、狩猟=潮汐)」と呼ばれていました。牡蠣も、これで運ばれるた新鮮なものが最高。

*馬飼育農家を訪問したとき、「パリに海産物を運ぶ馬車では、この種類の馬が使われていた」のだ、と美しい白馬を見せてくれたことがありました。白い馬だと、夜も見えるので採用されたとのこと。

北フランスのブローニュ・シュル・メール(Boulogne-sur-Mer)から魚を馬でパリまで早く運ぶ競争を再現したイベントを紹介したテレビニュース(1999年)がありました。1850年に鉄道が開通するまで、こうして馬でパリまで運んでいたそうです。


Ina: Route du poisson


18世紀全般の食事風景

数年前に、この絵画を所有しているコンデ博物館(シャンティイ城)が、17世紀から19世紀までの貴族の食生活をテーマにした特別展をしました。17世紀は、フランスの食事が現代のものに大きく近づいた節目の時期。当時の食器などやテーブルセッティングなども見れて、とても面白い企画でした。

☆ コンデ博物館の主任学芸員が特別展について色々な話しをした録音: Tables princières à Chantilly, du XVIIe au XIXe siècle

牡蠣の食事の絵は、特別展でクローズアップされていました。じっくり眺めると、色々なことが見えておもしろいです。この当時の貴族の食卓では、氷水で入れた小さなドンブリのようなものでグラスを冷やしていたとか...。牡蠣の食べ方にしても、当時の人たちは、ニンニク、バター、塩、胡椒で生牡蠣を食べていたと分かります。

絵画を所有しているシャンティイ城は、フランスの食文化に残る逸話もあります。上にリンクを入れた録音でも触れていますが、シャンティイ城の接客応対責任者を勤めていたヴァテルは、コンデ公が王様を招待した大切な宴会で、海産物が届かないのを苦にして自殺したという逸話があります。

真実の話しはそう簡単なものではなかったらしいのですが、ドラマチックな話しなので、書物も出ているし、映画にもなっています。

ヴァテル ― 謎の男、そして美食の誕生(東京創元社)
Vatel [DVD] [Import]



牡蠣を食べているだけではなかった

話しを戻して、前回の日記に入れてクイズにした牡蠣を食べている食事風景の絵。

牡蠣をむいている召使が左下にいて、床には殻が散らかっています。

食べ物としては牡蠣以外には何もないようです。当時の貴族の間では牡蠣だけの食事が流行っていて、一人150個くらい食べるのが普通だったそうです。

そんな風に牡蠣ばかり食べる食事の光景なのですが、よく観察してみると、絵の中で牡蠣を口にしている人たちは少数なのですね。私が数えたところでは3人。

こんな場面が大きな部分を占めています↓

「牡蠣の昼食」の一部分

ワインボトルにしてはズングリしていて変ですね...。伝統的なドブロクの容器は、こんな風ではなかったでしたっけ?


前置きが長くなってすみません!
次回の日記にクイズの答えを入れます。
クイズの答え (1): 見上げていたものは何か?

ブログ内リンク:
★ 目次: 画家、彫刻家、建築家の足跡を追って

外部リンク:
☆ CRDP Amiens: DE TROY - Déjeuner d'huitres


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コメント
この記事へのコメント
もしかして絵の中の人たちが飲んでいるのはシャンパーニュですか?そうだとすると開けるときに中身が吹き出てきたかブションが飛んだかで皆さんそれを見ているのでしょうか?皆さんなんだかはしゃいでいる感じですし♪

それにしてもひとつの絵画からいろんな歴史的背景が引き出されて面白いですね!貴族の踵の赤い靴、次から絵を見るたびに探してしまいそう。Otiumさんのブログのおかげで次回のフランス(&周辺国)訪問の楽しみが増えました^^

昔のお城にトイレがなかったのはよく聞きますが18世紀半ばまでダイニングルームがなかったのはびっくりです。足組みに板を乗せただけのテーブルとは考えようによっては合理的ですね。香港の人気のある海鮮料理のお店でお客さんが増えると丸い上板をごろごろころがしてきて足組みの上に乗せてクロスをかけて「はい、どうぞ!」ってしていたのを思い出しました。


2010/02/11 | URL | 元ぶるとんぬ  [ 編集 ]
もうひとつのクイズ
クイズの答え、私当たったのかなあ…?早く答えが知りたいです!
ところで、もうひとつの、どうしてこの宴会の席に女性がいないか?という問題について・・・これも、考えてみました。というか、大して知識もないので、これもまた調べてみたのですが・・・・この宮殿の中のそれぞれの間に、デザートを食べる間(ヴィーナスの間?)、ビリヤードの間(ディアナの間?)、酒宴の間、舞踏の間・・・と目的に合わせて部屋が分かれていたので、女性たちはたとえばみんな、ヴィーナスの間にいたとか・・・?どうでっしゃろ????
2010/02/11 | URL | ママン  [ 編集 ]
v-22元ぶるとんぬさんへ

>ブションが飛んだかで皆さんそれを見ているのでしょうか?
⇒ おみごと♪ その通りでした♪ 絵を良く見ると、柱にシミのように描かれているのが見えます。次の日記で拡大写真を入れます。

>ひとつの絵画からいろんな歴史的背景が引き出されて面白いですね!
⇒ 解説をしてもらうと、全く目にとめなかったことが見えて面白いですね。全部の絵画の解説を見たら面白いのでしょうけれど、中には「こじつけだ」と反発を感じてしまう解説もあるので、何にも先入観なしに見た方が好きだ、とも思ってしまう傾向にありますが、単に勉強嫌いかも知れない...。現代芸術では、作家みずから解説して、それを聞くと「なるほど...」と言わせるパターンが多くて、これにも反発を感じてしまっています。

>18世紀半ばまでダイニングルームがなかったのはびっくりです。
⇒ 考えてみると、日本文化でも、畳の部屋を寝室にしたり、食事をしたりできるので便利なのと同じかな... と思いました。フランスで観光していると、その時代の人がどういう食生活を送っていたかというのが、かなり大事な見学ポイントになっているのですが、日本での観光では余り出さないので、せいぜい台所の設備が残っているのを見たことがあるような感じがしています。

フランスのお城で、普通の部屋にテーブルをしつらえて食事していたというのは、今日のフランスでテーブルにお皿などを並べて用意することを「dresser la table」というのの語源だ、とガイドさんがよく言っています。フランス人観光客たちは関心していますが、観光ばかりしている私は「もう知ってるぞ~」と悦に入っています。

>足組みに板を乗せただけのテーブルとは考えようによっては合理的ですね。
⇒ これが便利なのは、今のフランスでもかなり活用しているように感じています。50人以上の人たちを招待したガーデンパーティーなどでは、組み立てテーブルがよく使われているので。普段は使わないわけですが、しまっておく場所をとらないので便利なのですね。
2010/02/11 | URL | Otium  [ 編集 ]
Re: もうひとつのクイズ
v-22ママンさんへ

>クイズの答え、私当たったのかなあ…?早く答えが知りたいです!
⇒ みごとお正解です♪ 奇想天外な答えを出してくださったpepe犬さんが、お酒を飲んでいる拡大部分をご覧になったら、何なのかすぐに当てられると思うのですが、2度目のコメントを待たずに正解が分かる部分を次の日記に入れました。早々と正解を出してくださったママンさんをじらしたくないので。

>これもまた調べてみたのですが・・・・
⇒ 考えてくださってありがとうございます、というか、悩ませてしまって申し訳ない! 2番目のクイズの答えもコメントでいただいたので、すぐにのせますね。
2010/02/11 | URL | Otium  [ 編集 ]
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