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2011/03/02

シリーズ記事目次 【フランスでは、なぜホウレン草を嫌う人が多いのか?】 目次へ
その2


忘れもしない昔のある日のこと。フランスに行くたびにお世話になっていた友人宅にいた私は、日本から黒ゴマや醤油などを持ってきて、日本料理を作ってご馳走しようという計画を実行しようとしていました。

今でこそフランスは日本食ブームですが、当時のフランス人は和食なんかには全く興味を示されない時代でした。


フランスで初めてホウレン草の料理を作ったときの思い出

ホウレン草の胡麻和えを作ろうと思っていたのです。

まず、買ってきたホウレン草をゆでなければなりません。台所でホウレン草を洗って、大鍋に湯を沸かして、塩を入れて、さてホウレン草を入れようとした、そのとき!

「あぁ~、な、なにするの~!」という叫び声が後ろからかかってきました。

地球の裏側からやって来た私が、変なものでも食べさせるのではないか、とマダムは心配していたのではないでしょうか。いつの間にか台所に来て、私がしていることを監視していたらしいのです。

このときに学んだのでした。

フランスでホウレン草の料理を作るときには、日本のように根っこの部分だけ捨てたのではいけないのだ、と。


ホウレン草の茎は食べない!

フランスで売られている普通のホウレン草には、日本のホウレン草のように根の部分はついていません。

「普通の」と断ったのは、根っこつきで売れれているのは見たことはないけれど、フランスにも売っていることがあるのではないかと思うからです。

摘み取られた葉だけのホウレン草なのですから、茎の先の痛んだところだけ取れば、全部食べられてしまうのだ、と私は思ったのでした。

でも、ほうれん草の葉は、茎を取り除いた部分を食べるのがフランスのやり方なのだそうです。茎を捨ててしまうなんて、と驚かれませんか?

私にストップをかけたマダムは、茎の取り除き方を教えてくれました。

葉を裏返しに持って、もう片方の手で茎の下からひっぱる。すると、茎が取り除かれ、大きな葉の場合には葉脈まできれいにはがれてくれます。

手間はかかりますが、やってみると、おもしろいほどよく取れます。

茎をひっぱって除く方法は面白いので、それを見せている動画を探したのですが、ちらりと見えるものしか見つかりませんでした。たとえば、こちら


ホウレン草の茎の取り除き方

フランスのホウレン草だって、日本人のように茎のシャキシャキ感が良いと思ったら食べられてしまうのではないかと思うのですが、まだ実験してみたことがありません。

でも、これをやっていると、大量に買ってきたホウレン草はかなり目減りしてしまいます。その後に茹でると、さらに量は少なくなる!

書きながら、本当にフランス人は誰でもホウレン草の茎を取り除くのだろうかと疑いを持ったので、ネットで調べてみました。

やはり、茎は捨てるようですね。

やり方は2通りあるようです:
1) 茎を引っ張って、むくようにして取り除く
2) ナイフで茎を切り落とす

動画でデモンストレーションしているものは見つからなかったのですが、写真入りで説明しているページは出てきました。フランス人が作っているサイトですが、英語バージョンにも切り替えられます。

Comment préparer des épinards / How to prepare spinach

ここに書いてある方法は、私がフランスでしているのと全く同じでした。つまり、茎を取り除いたホウレン草は塩を入れた熱湯で茹でて、冷水に入れてから水切りするという方法。

ただし私は、最後にスダレで巻いて水切りをしています。これが非常に便利! 海苔巻のように細長くできあがるので、それを切って、醤油と鰹節をかけておひたしに見せてしまうこともできます。


うんざりする準備!

スーパーでは下ごしらえが済んだホウレン草のパックを売っているのではないかと思うし、冷凍食品もあるはずです。でも、私は朝市で、しかも農家直売のものしか買ったことがありません。

この間の週末に行った朝市では、小ぶりできれいなホウレン草があったので1キロ買いました。

フランス人にホウレン草の胡麻和えが好評なので、私の数少ない(!)レパートリーの一つにしているのですが、下ごしらえするたびに、こんな料理を得意料理にしてしまったことを後悔してしまいます...。

今回も手間がかかりすぎるよ~… と、半ばうんざりしながらホウレン草の下ごしらえをしたので、写真をとっておきました。

買ったホウレン草の下ごしらえが終わったところの写真:



ついでに、ゴミ箱の方もお見せします。これが捨てた茎です:



ここまでするのが大変なのです!

まず、買い物から帰ったら、まっさきにホウレン草を解放してあげる。なにしろ、スーパーのレジ袋のようなものにギューギューに押し込んであるのですから、そのまま放置していたら葉が痛んでしまいます。そして、できるだけ早く茹でることにしています。翌日までおいておいたら、捨てる葉がたくさんでてしまいますから。

ホウレン草には泥がついているし、雑草も少し混じったりしているし、虫も入っていたりする。何度も水を替えて洗わなければなりません。

ゆでるには大鍋を使いますが、ホウレン草をいっぺんに入れて水の温度を下げたくはないので、何回にも分けます。ある程度の量の茎を取り除いたら、茹でる作業に入ります。ゆでながら、残りのホウレン草の茎を取り除く作業をする。それをしながら、鍋の中のホウレン草が茹ですぎていないように気をつける。

その繰り返しをやって、できあがるのは小さくなったホウレン草…。

台所の床は水浸しだし、手は冷たいし、足は棒になっている!

嫌にならないで下ごしらえができるのは1キロが限度だ、と決めています。2キロ買ってしまったときには、もううんざりしてしまったので。

1キロで、せいぜい4人分というところでしょうか。大勢人を招待してホウレン草の胡麻和えを出すときには、一人当たりの分量をごく少なくして済ませています。ほんの少し出すのが日本料理なのだ、と言い訳をして!


小さな葉のホウレン草を買いたい

ほうれん草の葉が小さければ葉脈の部分まで取り除かなくても良いでしょうから、私はできるだけ小さなホウレン草の葉が売られているときだけに買います。大きな葉のは、サラダ菜の葉くらいに大きいのです!

ただし、もっと小さいうちのホウレン草(pousse d'épinard)もあり、そのままサラダで食べられると言って売られています。でも、非常に高価!



これは5年前、こんなに小さなホウレン草もあるのだと知って撮った写真です。フランスの食品は普通は1キロの値段を表示するのですが、これは高給食材なので100グラムの値段が書いてありました。1.90ユーロと書いてありますが、あれから野菜はどんどん値上がりしているので、今ではこんな値段では手に入らないはずです。

今は、普通のホウレン草は1キロ400円前後。サラダ菜の値上がりに比べれば、ホウレン草はそう高くなってはいないかな... という気はします。


このくらいの大きさの葉が良いなと見えるホウレン草が入った動画があったので入れておきます。



何のためにYouTubeにこのビデオを入れたのかわかりません。「Traviller, travailler à éplucher les épinards ♪」と繰り返しています。「ホウレン草の皮剝きは大変だ」と言いたいのでしょうか?…

動詞「éplucher」は果物の皮をむくときなどに使うと思いがちなのですが、不用な(あるいは痛んだ)部分を取り除くときにも使う単語なのでした。日本語では、リンゴの皮をむくのと、ほうれん草の根っ子を切り落とす行為は同じには扱わないですよね?… でも、リンゴの皮をむくときには、ヘタの部分も一緒に切り取るわけだから、同じか…。

このビデオに写っているくらいの太さの茎のホウレン草だったら、茎を取らなくても良いのではないかという気もします。でも、フランス人に出したホウレン草料理に「茎が入っている!」と非難されたくはないので(ケチだと思われるでしょうから)、このくらいでも茎は取り除いています。



ほうれん草の胡麻和えがフランスの友人たちに好評なので、私の数少ない(!)レパートリーの一つにしています。

ゴマ醤油の味付けが気に入られたのだろうと、長らく思っていました。でも、バター炒めして生クリームを入れた、つまりフランス風に調理しても美味しいと言われます。つまり、私のホウレン草料理は、フランス人たちには驚くものらしい...。

料理上手なわけでもないので、特別に調理しているわけではないのです。
気になったので、なぜなのか考えてしまいました。

- 続く -




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コメント
この記事へのコメント
はは~、大変そうですね~。
茎ごとゆでて、冷水にとってそろえて束にして、茎のところを切り落としたりするのではダメなのでしょうか?
それだと茎もまじったりするのかな~。

ほうれんそうは、スーパーで買うものは確かにあんまり味がしませんが、去年までじじが作っていたものは、普通の畑にじか植えで、雨露もじゃんじゃん降り注いで根っこのところは泥だらけでしたけど、すごく濃い味がしました。マンホールくらいに葉っぱがビヤーッと広がって、一枚一枚は白菜の葉っぱくらいの大きさがあったのですが、筋だったりもしなくて、不思議とおいしかったです。2株で1キロくらいあったかもしれません。根っこは真っ赤で鉛筆の太さの2倍くらいありました。

いま、シロウトがただタネをまいただけのほうれんそうが畑で育っています。まだ小さいので、このサイズなら楽に使えるかも♪ いっそ、自家栽培してみてはどうですか? 今年はうちの畑も年末から2月頭までほとんど雪で埋もれてましたが、なんとか育ってます。
2011/03/02 | URL | すぎちゃん  [ 編集 ]
v-22すぎちゃんへ

フランスのホウレン草が、本当に茎の部分は食べられないものなのか、一度は実験して検証してみなければ... と、日記を書きながら思ったのでした。日本では珍味とされるものがフランス人には評価されないのがあるのは経験していますが、まず私が美味しいと思えるかどうかは試さないと...。

>マンホールくらいに葉っぱがビヤーッと広がって、一枚一枚は白菜の葉っぱくらいの大きさがあったのですが、筋だったりもしなくて、不思議とおいしかったです。
⇒ 貴重なご報告です! 日本のホウレン草がそんなに大きく育つものだとは想像もしていませんでした!

日本の野菜や果実は、見た目を最重視していますが、それが最高の美味しさを出す手段ではないのですよね。自然に育ったものは美味しい。じじ様の野菜のようなものが市場に出回って欲しいです!

九州の小さな町で、店先に近所の人が作ったらしい白菜が2つ3つおいてあったのにいきあたったのが強烈な印象でした。のびのびと育った姿が美しくて、おいしそうで、見とれてしまったのです。お店の人が出てきたので、「こんなに大きな白菜を抱えて帰るわけにはいかないのが残念...」ともらしたら、「私たちには普通の白菜なんですけどね」と言いながら、福岡の人たちも見事な白菜に驚いているのだと言われました。東京に比べれば福岡は格段に食材に恵まれていると思っていたのですが、やはり、こんな見事な白菜はないのか... と、思ったのでした。

>いっそ、自家栽培してみてはどうですか?
⇒ 悲しいかな、私の家庭菜園の土はひどい土なのです...。土を買って入れても、すぐに石灰質の土壌に消えてしまうだろうと思うので、膨大な費用をかけて投資する気になりません。日本で畑の土を見ると、フランスが農業国だというのが信じられなくなります。フランスで地平線の彼方まで穀物畑を持っている農家の人と話したら、10センチも掘れば石ころだけなのだと言われて、本当にそうなのを見せてもらったら、確かに100ヘクタールくらいは農地を持っていなかったら穀物栽培農家としてやっていけいけないだろうな、と思ったことがありました。フランスでも、肥沃な土壌の地域はあるのですけれど、それでも日本の土に比べたら大したことはないと思ってしまっています。

ついでに、フランスでも、火山灰が入った農地は肥沃だと言われているのを知ったのも興味深かったです。

私のお気に入りブログにあった最近の記事(野菜の未来: http://folli-2.at.webry.info/201102/article_3.html)で、日本では野菜工場をつくるのが推進されていると知り、ものすごくショックだったところです。泥がついたホウレン草を洗うのは大変だとぼやいてしまいましたが、それが本来の風味を満喫できる野菜で、それは消えて欲しくないと思います...。
2011/03/02 | URL | Otium  [ 編集 ]
野菜工場
景気の悪化で空き家になった工場を野菜工場に、とか、大型商業施設のレストランに小規模の野菜工場部屋を併設して、「とれたて」野菜を使ったサラダを出すとか聞いたことがあります。
私自身は工場の野菜をありがたいとは思えませんが、そんな風にでも「野菜を作ろう」と考えて実行する人が増えることには反対ではありません。今や農家の高齢化は待ったなしのホントに瀬戸際だと感じているので、少しくらい外れていても、農業のすそ野が広がることは賛成なのです。
うちも主力だったじじが亡くなり、ノウハウは受け継がれないままですし、頼りに思っていた近所の親戚のおばあちゃんも、先月倒れて入院しています。近くにあと2軒、いろいろ野菜を作っているベテラン農家のおじいちゃんおばあちゃんがいますが、みんな70代です。いつやめると言われてもおかしくないです。
野菜工場の栽培品目は、おそらく葉もの野菜や、(水で栽培できる)トマトくらいで、いずれも輸入するようなものではないわけですが、私としては、こだわりのない人には輸入野菜を食べるくらいなら、野菜工場の野菜を食べてほしいと思っています。
携帯でアクセスして、リンクを見ないまま書いています。
2011/03/04 | URL | すぎちゃん  [ 編集 ]
Re: 野菜工場
v-22すぎちゃんへ

日本の野菜工場について少し調べてみて、一番ショックだった、というか一番怖いと思ったのは、農業に全く関係がない大手企業が参入しているということでした。農業を工場勤務したら働く人を確保できるでしょうから、未来の産業だと乗り出すのは賢いのでしょう。農水省が補助金を与えて支援するのは、日本の自給率を高める手段だと好意的に受け取らなければいけないかもしれない。

でも、問題はないのだろうかと疑問に思ってしまいます。野菜工場の生産物は原価が高いのがネックになっていますが、技術が向上したら安くできるようになるでしょう。丹精こめて野菜を作っている農業者たちの首を絞めることになるのではないか?… 本来の野菜の風味が見分けられない時代になってしまうのは淋しい…。

農業は大変な仕事ですが、人間性をゆがめてまでして働くサラリーマンにはない充実感があるので、農業をすることを好む人たちががいて自然だと思うのです。日本は何かおかしい…。農業国であり、おいしものを見極める人たちがまだたくさん存在しているフランスにいると、そう感じてしまいます。
2011/03/05 | URL | Otium  [ 編集 ]
リンクをのぞいてみました
パソコンで、リンクをのぞいてみました。
確かに気味が悪いし、利潤追求の企業の手で先々どんな風になっていくのか気になる…ことは気になります。
それでもやっぱり、「農産物を扱うこと」を自分の仕事とする人が増えることは私にはうれしいです。
野菜工場で“野菜”に触れるうちに、ほんものの野菜づくりの方へシフトする人だって出てくるのではないか、という期待を持っていますし、野菜工場のニュースを見て、ふつうの農業に興味を持ったりちゃんと作っているものを意識して選んだり…するようになってくれないかな~とも思っています。
いずれにしても、「丹誠こめて野菜を作っている人」が、日本全国で数年後は激減しているであろうというのが私の見立てなのです。いま各地にある直売所だって、生産者がいなくなって並べる野菜が出て来なくなることだってじゅうぶん考えられます。“ちゃんとした野菜”は、野菜工場ができてもできなくても、作り手がいなくなることによって、この先身の回りから少なくなっていくでしょう。それは、みんなが野菜づくりから遠ざかってしまった結果で…。
とりあえず、野菜工場もよしという考えのもと、私も今年から野菜を作ることを(少しは)始めようと思っています。
実際、今は花壇に花を植えているだけですが、スコップで土を掘ったり水をかけたりしてるだけでも結構楽しいな~と、「なんちゃって農家」のデビューをここちよく感じています。
2011/03/10 | URL | すぎちゃん  [ 編集 ]
Re: リンクをのぞいてみました
v-22すぎちゃんへ

再度のコメントどうもありがとうございます。すぎちゃんは農業の現場をたくさん見て危機を痛感していらっしゃるので、「工場生産の野菜なんか、いや」などと拒否反応を持つのは甘っちょろい考え方なんだろうな... と思います。

20年くらい前だったと思いますが、アフリカから来た研修生の通訳として、東京近郊の農業を視察したことがあります。当時としては最先端技術、今はきっと「ふつう」の都市型農業だったと思います。こういう風に作ったものを食べているのかと知って吐き気がして、その後3週間くらいは食事が喉に通らなくて苦しみました。

パリ市では、住民が土いじりをするのを支援するプロジェクトが進められています。大都市でも空間はあるわけで、公園、空き地、公営スポーツセンターの屋上を家庭菜園として利用するのです。土いじりをするのは市民がつくったNPOのサークル活動。

日本も同じように都市住民を農業に親しませるプロジェクトを考えているようですが、やはり大企業が投資する野菜工場パークみたいなものをつくるというアイディアが前面に出ていました。私は寂しいと思うけれど、日本は工業で成り立っている国なのだから、それなりの価値観で生きないといけないのだろうなとも思います...。
2011/03/10 | URL | Otium  [ 編集 ]
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