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2011/05/01

シリーズ記事【フランス人の異常なまでの節電意識(目次】 その5


フランス人に言っても通じない日本語の表現に「湯水のように」というのがあります。フランスは日本のように水資源がありませんから、「湯水のように使う」と「浪費」はイコールにはなりません。

今思うと、電気も湯水のように使うものという意識が私にはあったのかも知れません。フランス人たちに注意されながら、人がいないところでは電気を消すのに慣れるには数年以上かかったと思います。

電気を切るのに慣れたら、帰国したときにつけっぱなしにしている電気があると切りたくなってしまうようになりました。電気の無駄づかいをしているのが気持ち悪いのです。

それにしても、なぜフランス人たちはそんなにまで節電をするのかと不思議に思っていました。

あるとき、電気を切り忘れて注意されたときだったか、その疑問をぶつけてみたことがありました。


省エネのキャンペーンがあって、叩き込まれた

そう言われたのです。

オイルショックのときだったそうです。

テレビなどで、しつこく、しつこく、省エネを訴える政府のコマーシャルなどがあって、それで節電の習慣がついてしまったと言われました。

「オイルショックのときの日本では、トイレットペーパーがなくなった」と言ったら、驚かれました。フランスで「物がなくなる」というデマが流れると、買いだめがおこるのはジャガイモとか砂糖とか、なくてはならない食べ物なのだそうです。

「なぜトイレットペーパー?!」と聞き返されましたが、返事に困りました。トイレにこだわるのは日本独特なのでしょうね…。

福島原発事故の後の日本では、ニュースを見ていると、電気がたりないとか、いや実は足りているとか言われています。「停電するぞ~」というのも、単なる脅しのように聞こえてしまう...。

フランスの省エネ・キャンペーンがどんなものだったのかもっと知りたくなり、また友達に教えてもらいました。


ガスピー君の活躍

フランスで大々的な省エネ・キャンペーンがおこなわれたのは、第二次オイルショック(1979年)のときだったそうです。

キャンペーンの名前は、「Chasse au Gaspi(シャス・オ・ガスピー)」。

gaspi
右の絵が「gaspi(ガスピー)」という名前のキャラクター。

「ガスピー(Gaspi)」とは、「浪費」の意味がある「ガスピヤージュ(gaspillage)」の頭をとった造語です。

この子を撲滅するというのが省エネ・キャンペーン「シャス・オ・ガスピー」。

子ども友達も、憎らしげな顔をしたガスピー君を見つけて射止めるように(シャスとはハンティングのこと)と教育されたのでしょうね。

興味を持ったので、ガスピー君について詳しい背景を知りたかったのですが、ネット情報では何もでてきませんでした。Wikipédiaにも記載がありません。

ただし、歴史的に貴重な映像をネットで見せているINA(フランス国立視聴覚研究所)のサイトでは、省エネ・キャンペーンのテレビ番組が入っていました。ガスピー君が出てきます。


☆ INA: Economies d'énergie(1979年5月21日)

このビデオに出てくる漫画キャラクターがガスピー君です。
アナウンサーは、毎日、色々な角度から省エネできる特集をしていると言っていますね。

なお、このビデオに出てくるガソリン節約のための地図は、ネットオークションで売られているので画像がよく見えます(画像をクリック)。
☆ eBay:
Carte Route France 1979 Chasse aux Gaspi Eco Energie

リンクを入れたビデオはガソリンの節約に関するテレビニュースですが、ガスピー君について話してくれた友達は、当時は子どもで車には関係なかったので、節電などの省エネ対策を叩き込まれる漫画を覚えていると言っていました。

本当に、しつこいほどのキャンペーンだったそうです。

INAのサイトには、第3次オイルショックのときのテレビニュースも入っており、70年代に行われた「シャス・オ・ガスピー」を思い出させようとして当時の映像を入れていました。
☆ INA: Economies d'énergie(2004年10月13日)

アナウンサーが「みんなで一緒に電気を消したら電力会社のメーターがどのくらい下がるかやってみましょう」、などと呼びかけています。いらない電気は消す、車のスピード落としてガソリン代を節約する、家の断熱効果を高める工事をしたりして光熱費を節約するなどが行われたようです。このときの国民の努力により、エネルギーを4.5億フラン節約(1977年)。サマータイムが導入された時期だったので、節電だけでも30万トンの石油が節約できたとのこと(1976年)。


それは洗脳?

ガスピー君を射止めるようにと叩き込まれたのは、いってみれば洗脳。でも、省エネをしようという教育は、悪いことではないですよね?

面白いなと思うのは、このキャンペーンの世代のフランス人たちが省エネを心に叩き込んでしまっただけではなくて、後世にも伝わるということ。

このシリーズで初めに入れた日記は、省エネ・キャンペーンから10年くらいたっている時期でした。その頃にも影響は全く消えていなかったということですね。

省エネしないと気持ち悪い。人が省エネしていないのも、気持ち悪いと感じるようになる。子どもたちには、もちろん、それを叩き込む。私のようなフランスに来た外国人にも叩き込む。

キャンペーンは終わってしまっていても、洗脳教育はいつまでも伝えられる。
すごいものだな… と思いました。

日本では、原子力発電は絶対に危険がないクリーン・エネルギーで、原子力がないと電気がなくなる、と叩き込まれたのが効果をあげたのと同じなのかもしれない…。

続く


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コメント
この記事へのコメント
はは~…
そんな啓蒙活動ひとつで、国民全体の意識が徹底するというのは、すごいというか、おそろしいというか…驚きました。
ただ、もっと驚いたのは、動画に出てきたニュース番組?の男性に見覚えがあったことです。
1979年(だったかな?)の動画だけど、私がフランスでテレビを見ていたのは1997年。20年近くか、もしかしたらその前後もしていたなら、それ以上もキャスターをつとめているのでしょうか。語り口調も全く同じ。見た目年齢だけがちょっと違っていましたが、すごいな~!とビックリでした。
Patric POIVRONさんでしたっけ。今ももしかしたらご活躍でしょうか。
2011/05/02 | URL | すぎちゃん  [ 編集 ]
Re: はは~…
v-22すぎちゃんへ

>Patric POIVRONさんでしたっけ。今ももしかしたらご活躍でしょうか。
⇒ 後でもう一つ興味深いビデオを見つけたので追加したのですが、ご覧いただいたビデオ(一番目のもの)は、そのとおり、若かりし頃の彼です。フルネームはPatrick Poivre d'Arvor、ニックネームがPPDA。1947年生まれで、2008年までTF1の人気ニュースキャスターだったそうです。

TF1は見ないことにしているチャンネルなので余り見る機会がなかったのですが、何でもかんでも風刺してしまうCanal+の人形劇ニュース番組「Les Guignols de l'info(http://www.canalplus.fr/c-humour/pid1784-c-les-guignols.html)」の司会(そっくり人形)者になっているので、そちらの方に親しみがあります。

年をとると豹変する人もいますが、彼は若い頃の面影がしっかり残っているのでおもしろいですね。年をとったな、と感じるようになったのはつい最近のように思います。
2011/05/02 | URL | Otium  [ 編集 ]
なはは…名前のつづりが違ってましたね…。
人形劇、すごいですね~。どうやって操作してるんでしょうか。人が入っているのかな。
それにしても、声やしゃべり方の特徴もすごく似てる気がします。まさか本人じゃないでしょうけど。
…と、テーマと全然違う書き込みですみません。
ニュースキャスターは2008年までだったのですね。お年からして、リタイアされたのかな。
思わず懐かしい顔に会えて、うれしかったです。
2011/05/02 | URL | すぎちゃん  [ 編集 ]
Re:
v-22すぎちゃんへ

Guignolsの人形劇は、どうやって動かしているのか、私も不思議に思っていました。顔などはラテックスでできているそうです。探してみたら、どうやって動かしているのかがわかる写真が出てきました:
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/94/Ppd-guignol.jpg
PPDAさんです♪

小道具まで作るのは大変でしょうから実物大なのだろうと想像していたのですが、そうらしいですね。

声色を演じている人は、Canal+の他の番組に時々でてきて、ちょっとしたコントなどをやったりしています。一人で何人もの声を出して、笑い話を即興で作って、実に見事な才能です。

>お年からして、リタイアされたのかな。
⇒ サルコジが大統領になった早々にマスコミを牛耳る作戦に出て、大勢のジャーナリストが辞めさせられたので、彼もそれかなという気もするのですが分かりません。でも、人気番組のニュースキャスターはやめたけれど、今でもテレビや雑誌などで仕事をしているようです。出版した本も60冊になったそうだし、相変わらず活躍しているようです。

すぎちゃんはファンだったのかな?... 聞きなれた声を聴くとやたらに懐かしいものですよね。友達の家で「黒いレコード盤の音は良かったよね」と聞かせてくれたのが、日本でフランス語を勉強していたころに聞いていた歌手のものだったので、涙ぐむほど懐かしかったことがありました。何か思い出がある曲でもなかったし、特に懐かしむ時代でもなかったのに、と不思議に思いました。
2011/05/02 | URL | Otium  [ 編集 ]
省エネキャンペーンの徹底性の件、私が漠然と持っている感想なんですが、洗脳とか啓蒙、と言うよりも、社会的合意、に近いんじゃないでしょうか。「個人主義」と言われるヨーロッパですけれど、人々がある社会的な合意を持ってまとまるときって、デモの規模とか、これもキャンペーンが張られて立法もされた禁煙の徹底とか、日本にくらべてずっと大きな集団・規模になるような気がします。
日本でも禁煙はもっと徹底してほしいし、省エネも一過性ではなくて続くといいのですけれど。
2011/05/03 | URL | Saule  [ 編集 ]
v-22Sauleさんへ

省エネキャンペーンは、結局は国民にとっても節約になるので、社会的合意が大きかったでしょうね。70年代のフランスは、ここ数年のフランスよりも遥かに愛国心が強くて、皆で力を合わせようという意識が強かったから成功したのだろうとも思います。ただし、キャンペーンで省エネ精神をここまで国民に植えつけてしまったのは凄いと驚きます。

どう考えても悪くないことは、洗脳だろうが、啓蒙だろうが、政府がやって良いと思うのです。でも、原子力発電所は絶対に安全で、これがないと日本はやっていけないのだ、と子どもたちに教育するようなことは犯罪だと言いたいです。

フランスの禁煙対策については、反発を感じる点が多々あって、書くと長くなるので省略します。デモやストライキに関しては、フランスには伝統があって、これは日本でも発達して欲しいと思っています。フランスのマスコミがする政府批判には鋭いものがあって(現大統領はマスコミ操作をしようとしましたが、完全に骨抜きにするには至っていない)、これも日本で可能になるようなシステムができて欲しいと思っています。

日本が、今回の危機を契機にして、本当の豊かさを求める国になって欲しいと祈っています。日本は経済大国ですが、国民の生活は豊かではないというのが、フランスと出会って感じた一番大きなカルチャーショックでした...。
2011/05/04 | URL | Otium  [ 編集 ]
ブラボ!これは良い記事です。私も長い間、なぜフランス人が電気に関してケチなのかその理由が知りたいと思っていました。ようやく長年の疑問が解けました。
日本もこのキャンペーンをやるべきですね。
2011/05/04 | URL | 豊栄のぼる  [ 編集 ]
Re:
v-22豊栄のぼるさんへ

フランスで生活なさったご経験がある豊栄も、やはり気になっていらしたことでしたか。日本でも、こういう省エネに努める気運が高まって欲しいですよね。

なんらかの社会的危機が訪れたとき、根本的な問題を考えて方向を転換するようになるのは良いことだと思います。オイルショックの後に日本で何か変わったとは思えないし、学生運動が荒れた時代の後も何も変わらなかった。フランスの五月革命は、反体制運動そのものは成功しなかったとはいえ、人々の生き方が大きく転回した節目になったのも興味深いと思っています。
2011/05/04 | URL | Otium  [ 編集 ]
こんにちは!
フランスの節電に対する姿勢がわかって、とても興味深かったです。
将来行く機会があったときに、注目してみます。
確かに日本の蛍光灯や街の明るすぎるネオンにはがっかりするときがありますね。。

ガスピー君というキャラクターがいたんですね。
日本ではキャラクターやゆるキャラが大人気ですが、いわゆる悪者(撲滅したいもの)をキャラクターにするのはあまり見ないような気がします。
手洗いのキャンペーンにばい菌マンがいるのかもしれませんが、対象への違いがあるような気がして面白かったです。

静岡では、首相から浜岡原発所にストップ命令が出されました。
県民は安心です。
これから多少の経済後退や節電が求められると思いますが、日本でもガスピー君が登場するかもしれません!日本人は好きですものね、キャラクター^^
2011/05/07 | URL | chiaki@静岡  [ 編集 ]
Re:
v-22chiaki@静岡さんへ

>日本ではキャラクターやゆるキャラが大人気ですが、
⇒ 「おなかがいたくなった原発くん」という動画がネットで人気を呼んでいると知って、こんなものでごまかして欲しくないと苛立ちながら、日本人はこういうのが好きなのだな... と思いました。日本ではまだ「だいじょうぶ」路線だった時期ですが、フランスでは地震発生早々からチェルノブイリ並の事故だと大騒ぎしていましたので。仏語の字幕がついているのもあったのでフランス人に見せたら、「子ども向けの動画でしょう」と言われたのですが、見て喜んでいたのは大人の方が多かったのではないかな?... 

>いわゆる悪者(撲滅したいもの)をキャラクターにするのはあまり見ないような気がします。
⇒ 日本では悪者が人気キャラクターになるのは少ないかもしれませんね。

>静岡では、首相から浜岡原発所にストップ命令が出されました。県民は安心です。
⇒ 本当に良かったですね。でも、原発はSFアニメに出てくる、殺しても、殺しても生き返って立ち向かってくる怪物のイメージで、止めたって全面的に安心していられるわけではないのは怖いですが。

東京でもいつ大地震がおきても不思議はないと思いながら生活しているのですから、こんなところに原発をつくってしまったのが不思議です。原発がないと電気が足りないなどと言っている場合ではなくて、原発なしで生活できるようにする方が自然ですよね? ガスピー君は日本でも有名になって欲しいなと思って日記を書きました。
2011/05/08 | URL | Otium  [ 編集 ]
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