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2011/05/14
フランスの経済はリーマンショックの前から停滞していたし、フランス人は日本人のようには働かないのですが、何とかそれなりに国はつぶれないものなんだな… と感心していました。

フランスは福祉大国なのに対して、日本の福祉は貧弱。日本がフランスと同じくらい経済が停滞したらメチャメチャだぞ~ と思っていたのですが、なんとか頑張っているらしい…。

というか、日本では、生活が厳しくなった人たちがたくさんいても、国は無視するのでやっていけるらしい...。

前々から、フランス人から「お金持ち」と言われる日本の経済は、悪い労働条件で働く人たちが支えていると思っていました。契約社員とかパートタイマーで働く人たちの保護なんて、日本では全然ないですもの…。



日本では労働者の権利が守られていない

法律で定められている最低賃金が、日本はとても低いのですよね。

日本の最低賃金は、全国の加重平均額で730円だそうです(2009年度)。フランスでは、物価にスライドして毎年定められる最低賃金があって、その金額以下で人を働かせてはいけないことになっています。

フランスで全業種を対象に法律が定めている最低賃金(SMIC)は、今年は時給9ユーロ(税込み)。今日の為替相場に従って1ユーロ=117円として、1,053円。

フランスより日本は最低賃金が非常に低いと気がついたのは、ユーロが高い時期で(1ユーロ=170円くらいだったのはつい最近)、まだ中国に押されていない時期だったので、日本はお金持ちと言われているのに賃金は低いのだと驚いたのでした。

フランスの最低保証賃金というのは、かなり身近な存在です。楽そうな仕事だなと思うものでも、これを支払うことになっています。ご近所の知り合いに、ベビーシッターを頼む、家の掃除やアイロンかけをしてもらう、庭の草むしりをしてもらうなどというときも、これを基準にして支払います。

お知り合いなんだから、と心づけ程度で済ませられない。ちゃんと税金を払う支払い方をしないと、見つかったときには処罰されるのですが、まあ、お互いに黙っていればバレないというわけで、税務署に申告しないでやっている人たちは多いのですが、でも、ちゃんと最低賃金は払う!

☆社会実情データ図録: 最低賃金の国際比較
☆厚生労働省: 
地域別最低賃金の全国一覧

でも、日本人は「きれいな仕事」をしたがるので、底辺でホワイトカラーの仕事をするより、肉体労働をした方が収入が多いのだ、とフランスの友人たちに日本のシステムを自慢していました。

でも、そういうのって、底辺のホワイトカラーにいる私が思っていることであって、上の方にいる層では全然違うのですよね。東電の役員報酬は、今回の事故の責任をとらせるために半分にしても3,600万円残るのだそう。

高給をとる人たちがいるのはフランスも同じ。つい最近、ルノー社で大きなスキャンダルがおきたとき、カルロス・ゴーンは責任をとって社長を辞めることはしなかったのですが、「ボーナスを返上する」と言いました。その報酬カット額は160万ユーロ(2億円弱)!

収入が多い人たちにとってのお金は、私などが考える桁が違って、収入が減ったってどうってことないのだな… と思ったのでした。

そんな雲の上の話しは別にして、日本には、いくら大金を払われても、想像を絶するほど大変な仕事がある、と知って驚いたのは、福島原発事故がおきてから間もなくのことでした。


原子炉で働く作業員の想像を絶する過酷な労働

インターネットで調べていたら、信じられないようなビデオにいきあたりました。

十数年前のイギリスの番組らしいのですが、そのころにすでに原子炉作業員が被爆して死亡している人たちがいる、というもの。

隠された被爆労働〜日本の原発労働者

ビデオの続き » 2  » 3

この手の報道というのは、いくらでも誇張できるので、疑いを持ちました。でも、登場する日本人たちが「やらせ」で語っているようには見えない。番組の最後にSmall world productionという文字が出たので、確認したら、ちゃんと存在している番組制作会社のようです(Small World Television Productions)。このサイトのこちらのページに同じビデオが入っていました。

さらに、原子炉に取り付けたロボットがうまく取り付けられなかったので、数千万円もする精密機械を守るために原子炉に入った作業員の報告にも出会いました。
☆ JanJanBlog: 原発ジプシー 2010/12/26

でも、これらは昔の話しでしょう? 今は危険な原発の作業では無人ロボットが活躍しているはずだと思っていました。

ところが、その話しがでてこない。とても気になっていました。


無人ロボットを日本の原発は使っていなかったの?

フランスでは、日本のロボット技術が突拍子もなく優れていることをよく報道しています。

日本のロボット技術に関するフランスのテレビニュース:



ここまで進歩しているの?! 日本の科学技術のレベルは凄いのだ! と、感心しておりました。

福島原発事故が勃発したときには、「こんな優れたロボットが活躍しています」という話しが出てくるだろうと待っていました。日本のニュースは、震災の悲惨さの報道が終わったあと、原発は「だいじょうぶ」を連発して、明るい話題ばかりを出そうとしていましたので。

ところが、原発で働くロボットは登場しない...。

フランスでは、「原発で働くためにつくられたロボットを提供する」と大統領が嬉々として宣言していました。フランスを出発したというニュースもあったのですが、日本から拒否されたのか何なのか、フランス製ロボットが入って活躍したというニュースに出会いませんでした。

かなり遅ればせながら、アメリカ製ロボットが作業員が入れないところに入ったというニュースが出てきました。

日本にも当然あったであろう高性能ロボットはどうしたの?…

やたらに気になっていたのですが、ようやく謎が解けるニュースに出会いました。

日本では原発で作業するロボットを30億円もかけて開発したけれど、電力会社は「いらない」ということで、作った遠隔操作ロボットは実用化されなかったのだそうです。


税金の無駄遣いですが、日本の原子力発電所の開発費は年間30兆円とか40兆円とか使われているそうなので、30億円くらいは何でもなかったのでしょうね...。


不況時に大きな原発事故がおきたのが幸いだった、なんて思って欲しくない!

メチャメチャになってしまった原発施設の画像を見ると、なんとか抑えているだけでも凄いと思います。こっちをやっていると、お隣が危ない状態になる…。私が現場の責任者だったら、パニックになって自殺してしまうと思う…。

なんとか抑えられているのは、作業員の人たちが頑張っているからなわけで、日本を守るために頑張っている人たちだと声援を送りたい気持ちでした。

ところが、事故勃発間もないころ、福島原発で働いている作業員の人が「ヒーローなんかではありません」と言った記事を見ました。文字だったので感情は読ませんでしたが、英雄気取りでやっているわけではない、というお気持ちの表現だと感じました。戦争に行くように「国のために命を捨てる覚悟」というのより、生活のために危険な仕事をしているという痛烈な皮肉を感じました。

日本のマスコミも、ようやく過酷な作業の実態を出すようになったようです。上に入れた10数年前のイギリスの放送(原子力ギンザ)が、ずしんと響いてきます。こんなことまでして国の経済を発展させているのを知るのは辛い…。

フランスだって、原発で働く作業員は下請け会社の人たちで、何をさせているのかは公表はしないのだから同じです(作業員の証言ビデオ)。でも、破壊された福島原発の現場での仕事というのは、もう作業員の保護とか言ってられない状態でやっているのではないでしょうか? 今まであった安全基準なんか守っていたら、作業なんてとてもできないと思います。

政府がしているのは、「だいじょうぶ」という放射能汚染の基準を緩やかにすることなのですから。チェルノブイリ事故のときは、ロシアだから酷いことをしたと言われてきましたが、日本もほとんど同じことをしたと、後世には世界中から批判されると思います。


放射能汚染というような得体のしれない危険の中で働く人がいなくなったらどうなるのだろう? と思ってきました。でも日本は、もともと、先進国では許されないような労働条件で経済発展をしてきた国です。失業率が高くなった今なので、そんなところでも働かなければならないという人を確保し続けられるのかもしれない。そう思うと怖くなります…。

☆ 現代ビジネス / 経済の死角: 16分で年間被曝限度突破!福島第一原発「超高濃度汚染の作業現場」 東電が公表しなかった毎時900ミリシーベルトの 驚愕事実!作業員は死ね、と言うつもりか 2011/05/14


国の発展は、犠牲になる人たちがいるから成り立つ、ということでしょうか?...

2月だったと思いますが、アメリカで制作された古代エジプトに関する番組をテレビで見ました。そこに登場した学者が、「ラムセス2世は雇用を創出した」と言っているのを聞いて怒りました。ピラミッドをつくるために過酷な労働をさせられた奴隷たちに「仕事を与えた」と肯定するなんて、あまりにも大胆です! でも、資本主義的な発想というのは、そういうものなのかもしれない...。


☆ videonews.com: ゴジラ+鉄腕アトム+田中角栄=原発大国への道
私たちはこうして「原発大国」を選んだ - 増補版「核」論 (中公新書ラクレ)


カテゴリー: 日本 | Comment (2) | Top
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コメント
この記事へのコメント
しばらく前に「湯水のように」という言葉について書いていらっしゃいましたね。
日本はとても豊かな国ですが、水も物も人も豊かで、そして、それらを「湯水のように」使ってきたように思います。もっとも、これは昔からそうだったのではなくて、おそらく高度成長以降のことですね。そもそも「湯水のように」という言い方自体は肯定的な表現ではなくて、そういう使い方を非難するニュアンスがありますし、高度成長以前の日本では普通の人たちはもっとつつましい暮らし方をしていたのですけれどね。

2011/05/16 | URL | Saule  [ 編集 ]
Re:
v-22Sauleさんへ

「湯水のように」という表現は不思議な言葉だと思っていました。私が子どもの頃には、毎年夏になると東京では「水不足」があったのです。給水車に水をもらいにいったのも覚えています。大人になってから、日本の田舎に行く機会があって驚いたのは、家庭に湧水が絶えず流れている場面があちこちで見られること。ある農家では、蛇口から出てくるようにしているしている水はいくらでも流したままにできるのだけれど、小さなお嬢さんたちが水は無尽蔵にあるのだという感覚を持って欲しくないので、水を節約しているように蛇口を閉めているのだとおっしゃっていました。

本来の日本はそういう国だったから、「湯水のように」という表現があったのだろうと思いました。お湯まで水と一緒に豊富だとされているのも凄い! これは温泉があるからなのかな?...

砂漠の国に「水のように使う」という表現があるとしたら、「大切に、ケチケチと使う」という意味でしょうね...。

おっしゃるように肯定的な場合には使われないのですよね。これがまた面白い。
パリに住む大金持ちの知り合いがいるのですが、彼女のお金の使い方は桁違いです。金額なんかには全くとんちゃくしていないで生活できる人は、まさに湯水のようにお金を使うと言いたくなりますが、日本語を正しく使おうとすると、そういう表現はできないのですよね。

ということは、日本では水もお湯も豊富だけれど、だからといって無駄遣いするのは良くないという感覚があるからこそ生まれた表現なのでしょうか?...

>高度成長以前の日本では普通の人たちはもっとつつましい暮らし方をしていたのですけれどね。
⇒ 経済大国になったあたりから、日本の素晴らしさが忘れられて、すべてが狂ってきてしまったのでしょうね...。
2011/05/17 | URL | Otium  [ 編集 ]
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