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2006/08/24

シリーズ記事 【シャンパンを買いに行ったついでにグリーン・ツーリズム】
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その6


シャンパーニュ地方の南部に位置するオーブ県で行き当たりばったりの観光した日帰り旅行で、一番感激したのは「カドル」と呼ばれる石造建物が幾つも残っている散歩道に出会ったことでした。

実は、先月行ったシャンパン祭り(セーヌ河流域の村々で行われたシャンパン祭り)で、こういう散策コースがあることを知って、いつか行きたいと思っていたら、たまたま通りかかってしまったのでした。

あいにくお昼前でレストランを探さなければならない時間だったので、車で行けるところまで移動して、あとは歩くというものでした。いつかたっぷり時間があるときに、ゆっくりと周遊コースを歩いてカドルを全部見てみたいです。


◆カドルとは?

cadole(カドル)というのは、石を積み上げただけ、つまり石と石をつなげるものも挟みこんでいないし、支える柱もなしに造った小屋のこと。

 

色々な形のカドルがありましたが、これは一番背が高かったもの。
入り口は腰をかがめて入れる高さで、中は数名が入れる広さです。



◆廃墟が好き

「こちらに1つカドルがあります」というような標識がなかったら、とても見つけられないような場所ばかりにありました。

とんでもないところでぽっかりと姿を現す小屋...。感激しました!

昔の姿をそのままに見せるために修復されているのも良いのですが、崩れたままの姿も好きです。

例えばギリシャの建築。ギリシャで遺跡を見るよりも、シチリア島の浜辺に転がっていたギリシャ文化の建築物の柱を見たときの方が感動しました。

崩れている建物を見ると、なぜか私は、そこにいた人たちが感じられるのです...。

この日カドルと呼ばれる小屋を見ていると、こんな所でささやかな休息していた人たちが偲ばれてきました。


◆あちこちに残っていたカドルは何だったのか?

フランスで旅しているとき、古いものが残っていると説明する看板が立てられていることが多いのですが、ここには道しるべしかありませんでした。

予算がないのでしょうね...。めったに観光客が来ることもないようなところなので仕方ありません。せめて道を整備していてくれたのだけで感謝。

ブルゴーニュやボージョレーのワイン産地を散歩していると、こういう小屋を見かけることがあります。昔はたくさんあったのでしょうが、残っていないので、めったに見つけることはできませんが。

カドルは、ブドウ畑で作業する人が、夏は暑さしのぎ、冬は寒さしのぎをした小屋だったのです。ブドウ畑をつくるときには、畑から大きな石を取り去るわけですが、それを利用して小屋を造る。

この日に見つけたカドルは、どれも森の中や穀物畑の中にありました。

ブドウ畑にある、という先入観があったので、とても不思議。もしかしたら、木こりとか、炭焼きをした人たちの小屋だったのだろうか?...

カドルを6つくらい見たとき、時計は、もう午後1時を回っていました。

田舎で旅するときは気をつけなければいけないのです。2時くらいにはレストランに行かないと、どこも入れてくれないという悲劇がおきてしまいます!

周遊コースにあるカドルのすべてを見るのは諦めて、コースから抜けてレストラン探しを始めることにしました。

そうしたら、ブドウ畑にあるカドルを発見しました!



遠景はブドウ畑。まるでブドウ畑の海という広大さでした!


満足。やはりカドルはブドウ畑と一緒に見たいと思っていたのです!


◆帰宅してから、気になったのでカドルを調べてみました

こういう石灰石を積み上げた家というのが、私はやたらに好きなのです。

同じ情熱を燃やす人がフランスには多いので、インターネットには情報が出ているはず。帰ってからさっそく検察したら、出てきました!

やはり、私が見たカドルはブドウ畑で働く人たちの小屋だったそうです。

19世紀末、フィロクセラ(phylloxéra アブラ虫病)が発生してフランス各地でブドウ畑に大きな被害を与えたのですが、その後には余り質のよくないワインしか作れない畑などは再びブドウの苗が植えられることもなく放置されました。

この日私が行ったところも、昔のブドウ畑は姿を消し、石積みの小屋だけが残ったのだそうです。ここが再びブドウ畑として使われていたら、近代農業では邪魔なだけのカドルは取り壊されていたことでしょう。

カドルの古いものは300年も500年も前に作られたものがあるのですが、私が見たのはせいぜい100年か200年前に建てられたものでした。

それでも、近くに幾つも残っているのは貴重だし、なまじっかきれいに修復されていないだけに、昔の姿をとどめているので貴重な存在でした。


◆フランス語でも色々に呼ばれる石積み小屋

カドルのように、石と石の間に土などを入れて固めない石積みをpierres sèchesと言います。

そういう方法で作られたカドルは、地元によって様々な呼び名をつけています。

ドルドーニュを旅行したときには、こういう石を積み上げた小屋をたくさんみましたが、この地方ではBorie(ボーリ)と呼ばれていました。小屋というよりは、住居になっているくらい大きなものだったのを思い出します。日本で言えば飛騨高山の白川郷のような集落になっているところも見学しました。

ブルゴーニュではカドルと呼ぶのですが、スペルはcadoleともcadolleとも綴られます。

このほかにも、フランス各地に色々な呼び名があります。

なお、cadoleの日本語訳を知るために大きな和仏辞典を引いたのですが、出てきませんでした...。




Wikipédiaから:
Cadole   Borie   Capitelle

- La cabane ou le cabanon, un peu partout.
- La baraque, la baraquette, terme assez répandu également.
- La gariotte ou gariote qu'on trouve dans le Lot
- La borie, dans le sud de la France, notamment en Provence.
- La caselle, dans le Quercy en particulier, cazelle souvent sur le Causse du Larzac et le Causse Comtal.
- La cadole, dans le Mâconnais par exemple.
- La loge, dans plusieurs régions, Aube, Yonne...
- La Clède des Cévennes pour sécher les chataignes.
- Le pagliaddiu en Corse.

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この記事へのコメント
日本でも
呼び名は忘れましたが、同じように作業小屋があったという話を聞いたことがあります。

山深い村で、家から離れた山の田んぼで根を詰めた作業をしに行くときは、泊まり込みだったとか。これは、木造の固定した家ですが、平地の農村でも、田んぼが広い範囲にあちこちにあるところでは、ワラで小さな小屋を作って、その小屋を解体して持ち運びながら作業をしてまわったという話も聞いたことがあります。

どちらも、大家族の中の若い夫婦が(体力があるから)出かけていって作業をしていたようで、姑や舅から離れて、のびのびできて気が休まったそうです。
2006/08/25 | URL | すぎちゃん  [ 編集 ]
【Re】すぎちゃんさんへ / 日本でも
>呼び名は忘れましたが、同じように作業小屋があったという話を聞いたことがあります。



⇒ やはり同じことを考える、と言うか、同じ必要が生まれるのですね。



>山深い村で、家から離れた山の田んぼで根を詰めた作業をしに行くときは、泊まり込みだったとか。



⇒ 日本は山深い村でも田んぼをつくるので、フランスより通う道は遠かったのだ・・・。この日見たカドルには、数歩離れたところに井戸の跡らしきものがあるのがあって、こんな所で生活したのだろうか?・・・ と疑問に思ったのですが、ここは泊りがけでも便利なようにしていたのでしょうね。



>これは、木造の固定した家ですが、平地の農村でも、田んぼが広い範囲にあちこちにあるところでは、ワラで小さな小屋を作って、その小屋を解体して持ち運びながら作業をしてまわったという話も聞いたことがあります。



⇒ 解体できる小屋をつくるというのは賢い! こういうところにも、日本と石の文化フランスとの違いがでているのですね。この日行った地域にあるカドルの石の重さは、普通の大きさの小屋で2トンなのだそうです!



>どちらも、大家族の中の若い夫婦が(体力があるから)出かけていって作業をしていたようで、姑や舅から離れて、のびのびできて気が休まったそうです。



⇒ このカドルを見ていて、これってキャンプするときのテントの形だ、と思ったのです。若夫婦がキャンプを楽しむという要素もあったのでしょうね。フランスも、昔は日本のように親子同居でしたから。
2006/08/25 | URL | ブルゴニッシモ  [ 編集 ]
なぞが解けました! ありがとう。
随分前ですが、プロバンスを旅したとき、泊まった宿のおじさんが次の目的地まで交通の便が悪いので自家用車で送ってくれたことがあり、そのとき車中からこの石の小屋がたくさん見えて、おじさんに質問したのですが、こちらはフランス語がほとんどダメ&英語もたいしてうまくなく、あちらも英語が片言という状況で、一生懸命説明してくれたのですが、さっぱりわからないまま何年もたってしまってました。そんなことがあったのすら今まで忘れてしまってましたが、このエントリーを拝見して、あー、あれはそういうことだったのか!と長年の謎が解けました。ずっと古代の遺跡かなにかかと思ってましたー。カドルという名前すら聞き取れなかったので、調べようもなかったのですが、ネットの時代はほんとにありがたいものです。ありがとうございました!
2006/10/09 | URL | とおりすがりA  [ 編集 ]
【Re】とおりすがりAさんへ / なぞが解けました! ありがとう。
「なんだったのだろう?」が解けるお役に立てて嬉しいです。プロヴァンスだったら「カドル」ではなくて「ボーリ」と呼んでいたのではないかしら。ブルゴーニュあたりにあるカドルよりは歴史が古くて、立派だったはずです。宿のおじさんにとっては誇りにしている郷土資産だったはずなので、質問されて喜んでいただろうと思います。



>カドルという名前すら聞き取れなかったので、調べようもなかったのですが、ネットの時代はほんとにありがたいものです。



⇒ 私もネットで調べられるようになったのは便利だと感激しています。でもキーワードを知らないと、なかなか出てこないのが問題・・・。
2006/10/09 | URL | ブルゴニッシモ  [ 編集 ]
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